「夏期講習だけで30万、40万とかかるが行かない選択肢はないし、濃密な親子関係を築くこともできる」テレビ朝日・平石アナも取り組んだ東京の中学受験のリアル
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 8年連続で増加しているという首都圏の中学受験者数。少子化、コロナ禍にあっても加熱する“中受”(中学受験)。「結局金持ちじゃないと合格しないよね?親ガチャじゃん!」という意見もあることについて、中学受験専門塾「スタジオキャンパス」代表の矢野耕平氏はこう話す。

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 「地方の場合は公立の進学校に行けない子の受け皿として私立校があるケースがほとんどだと思うが、東京は特殊で、私立の高校だけでなく中学校も溢れていて、むしろそこに行けなかった子が公立中・高に行くという感じだ。また、タワーマンションが相次ぎ建設されている都心部、とりわけ品川区、中央区、港区、江東区などの臨海地域では子どもの数も増える傾向にある。

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 そうしたところに住む子どもはお父さん・お母さんたちは1990年代前後の中学受験ブームを経験した高所得者のご子息・ご令嬢であることが多い。さらにそう仕向けたおじいちゃん、おばあちゃんからの教育資金の非課税制度を利用した贈与を受ける家庭も増えているといった背景がある。また、私立中・高の生徒は電車通学することが多いので、コロナ禍が始まった頃には“中学受験は終わったな”と思っていた。しかし公立と比べオンライン対応が速く、子どもの学びを止めなかった私立が評価を高めたということもあると思う。

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 勉強は苦しいもの、というイメージもあると思うが、私は違うと思う。子どもの世界を広げてくれるものなので、中学受験を利用して、“学ぶことは楽しいな”ということを小学生のうちに知ってくれれば、それは将来の財産になると思う」。

■「尊敬しあえるレベルの高い友人、一生付き合える友人ができた」

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 都内に住む江口さん(仮名、東京大学卒)も、再来年の入試に向けて勉強に励む日々だ。

 江口さんが子どもに中学受験を勧めた理由は、自身も私立中学の出身だったからだ。「尊敬しあえるレベルの高い友人、一生付き合える友人ができた。カリキュラムや設備など、環境の良い所に身を置ける。そういったメリットがあると思い、子どもを誘った。まだ“この学校に行きたい”というのはないようだが、純粋に塾の勉強が楽しくて頑張っていて、毎日“お父さん、塾でこんな勉強をしたんだよ”と嬉しそうに教えてくれる」。

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 「遊ぶ方が大事なのでは?」「親のエゴだろ!」という意見も少なくない。こうした意見に対し、江口さんは「中学の3年間という多感な時期をどこで過ごすのか、その選択肢を与えられるというのが大きいと思う。高校受験の場合、どうしても内申点があるし、それはこちら側ではコントロールできないものだ。その意味では中学受験の方がフェアだと思う」と話す。

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 「ただ、親がコミットしないといけないので、子どもの向き不向き以上に親の向き不向きも大きい。そこで自分を子どもに投影したり、SNS上で他の子と比べたりして、プレッシャーを与えるような親御さんでは上手くいかないと思う。また、受験というのはスポーツと一緒で、最後は時の運もあるし、成功・失敗とは違う。仮に落ちたとしても、それまでに積み上げた努力や得られた知識は無駄にはならない。何が成功かということを定義してあげて、結果の如何に関わらず、やってよかったね、良い受験だったねと承認してあげられるか」。

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 一方、親の意向で中学受験をしたhiroさん(25)は「中学受験という選択肢しか用意されていなかった。親のエゴだったと思っている」と明かす。小学生時代、サッカーが大好きだったが、学習塾との両立は難しいと言われ、「勉強を取るか、サッカーを取るか、どっちかにしなさい」と言われてしまったという。

 結局、親の顔色を伺い、サッカーを辞めて受験勉強に集中することしたが、合格した学校が肌に合わず、高校進学時には別の学校を受験することに。「無理やり受験させても残るものはないと実感している」。

■「自分の子どもには公立に行かせたいという気持ちがあるが…」

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 スタジオでも様々な意見が出た。

 東洋経済新報社の山田俊浩・会社四季報センター長は「江口さんも明るいし、お子さんも楽しんでいると聞いて、いい話だなと思う。結局、中学受験をしなかったとしても高校受験がやってくる。苦しい思いをするくらいなら、まだ教科が少ない小学生で取り組んだほうが楽だろうというのも親心だと思う。ただ、“レベルの高い人と付き合える”という考え方は気になった。私は公立中の出身なので、色々な人たちと触れ合えた方がいいと思うからだ」とコメント。

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 YouTuberでピン芸人わっきゃいは、現役京大生の立場から「周りには中学受験経験者が多く、よく聞くのが“中学受験は父親の経済力と母親の狂気である”という言葉だ。小学生は判断能力に乏しいし、本人との認識ズレから子どもとの軋轢が生じることもあると思う。そして中学時代から価値観や家庭環境の似通った人としか過ごせないというのは、日本社会が目指している“ダイバーシティ”に反している部分も出てくると思う」と指摘する。

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 「僕は高校を卒業するまでロサンゼルスで過ごしていたが、高校ではハーバードに行くような生徒と、卒業後に即逮捕されるような生徒が同じ教室で学んでいた。もちろん教育の効率を考えれば、同じ偏差値の子どもたちをまとめた方が楽だ。しかし日本のあまりに“輪切り”にされている状況に帰国して驚いたことを思い出した。

 そして今YouTuberや芸人をやって感じるのは、大人になれば常にストレスのかかる勝負の世界だということだ。それは企業であっても同じで、就活、昇進という競争に晒されることになる。でも、そんなことに関係なく生きられる唯一の時間が小学生時代ではないか」。

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 中学受験を経験した元経産官僚の宇佐美典也氏は「やはりアメリカの場合は“飛び級”があるので、成績の良い子とそうでない子が一緒であっても調整していくことができる。しかし日本の学校ではそれがないので、特に公立校では学力差が開いたままの状態になり、場合によっては授業が成立しないような状況も生まれてしまう。

 私自身は地元の友達と今も仲が良いということもあって、自分の子どもには公立に行かせたいという気持ちがある。ただ、同級生の間では、“東京では公立中はお勧めできない”と言われてしまう。つまり区立中に上げることでのリスクを減らすためには私立中しかないとして、中学受験が“飛び級”代わりに使われてしまっているんだと思う」。

■平石アナ「上手く行けば、非常に濃密な親子関係を築くことができる」

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 一方、自身も子どもの中学受験を経験したテレビ朝日平石直之アナウンサーは「言ってみれば“教育をお金で買う”みたいなところがある。AO入試のような、“あなたは何ができますか”みたいな総合力を考えた時に、学力以外のこともやってくれるのが私立の特徴であるとも言える」と話す。

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 「例えば夏期講習で30万、40万とかかるが、“行かない”という選択肢はない。勝負から下り、“目標の学校を諦めるんですね”ということになるからだ。そのようにしてどんどん追い詰められていく。しかも塾に行っているだけでは成績を維持するだけで精いっぱいだ。個別の塾に入れたり、家庭教師を呼んだりして、“課金ゲーム”になっていく。でも、そうすることで成績がちょっとずつ上がっていく。

 そして家庭のスケジュールも、完全に塾中心になる。紙の量もムチャクチャ多いし、全て整理してあげないといけない。親はめちゃくちゃイライラしてくるとし、子どもとも険悪になっていく。それでも一緒に同じ目標に向かっていくことになるので、上手く行けば普通に育てるだけでは味わえない、非常に濃密な親子関係を築くことができると思う。

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 ただ、問題をパッと見た時に“これは周期算で解く”とか“鶴亀算だ”と、型にはまった問題の解決能力は高まっても、解けない問題をどう解くのか?という、世の中として課題になっているところについてはどうか、ということはある。そういう中で何を選ぶかというのはそれぞれの親次第、子ども次第というのは押さえておきたい」。

 その上で、「これから追い込まれていくので、着地点をイメージした方がいい。本当にしんどくなっていくから。そしてふたを開けないと本当に分からないから」と江口さんにエールを送っていた。(『ABEMA Prime』より)

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