将棋の藤井聡太竜王(王位、叡王、王将、棋聖、20)への挑戦者決定三番勝負第1局が8月9日に行われ、広瀬章人八段(35)が126手で山崎隆之八段(41)に勝利した。この結果、三番勝負に先勝した広瀬八段が挑戦権獲得に王手をかけた。
劇的なシーソーゲームを制したのは広瀬八段だった。相掛かりの出だしから、先手の山崎八段は攻撃的な布陣に。後手の広瀬八段は中住まいと低い構えを見せた。中盤戦は互いに慎重に持ち時間を削り合う展開となった。いよいよ勝負所と、広瀬八段は角交換ののち攻防の要にすぐに打ち直してペースを掴んだ。一方の山崎八段も攻勢を緩めることなく、後手の玉頭を目掛けた王手で中段へと誘い出した。しかし、広瀬八段が飛車を取り戻すとABEMAの「SHOGI AI」は緩やかに後手側へと傾きだし、じわじわとリードを拡大。最後まで猛攻を見せた山崎八段だったが、広瀬八段が桂馬を軽やかに跳ねて寄せ切るかと思われた。
エンディングに向けて、後手は王手銀取り。飛車を成って銀を取ったところで、逆に先手に拠点を与える結果に。広瀬八段のまさかの錯覚で、形勢は大きく山崎八段に傾いた。しかし、1分将棋に突入した山崎八段を猛追し、再度広瀬八段が逆転。激戦を制し、大きな戦果を挙げた。
ドラマチックな一局を制した広瀬八段は、「恥ずかしいレベルのミスをしてしまった。最後は勝負にするしかなくなった。この将棋がひどい形になったが、最終盤のミスは致命的になってしまう。その辺を気を付けて頑張りたいと思います」と冷や汗をぬぐった。
千載一遇のチャンスを逃した山崎八段も「大チャンスを頂いたが、最後まで踏み込めなくて情けない負け方をしてしまった。もうちょっと寄せに行った方が良かったんじゃないかなと思う。ちょっと中途半端にしてしまった。寄せに行くというよりは負けないように指していたが、詰みがわからなかった。もう少し詰将棋をやらないと…」とがっくり。「もう少し読みの精度と、決断力を上げないと勝つチャンスがない。その2つを少しでも良くして、良い将棋を指したい」と必死に前を向いた。
この結果で、挑戦者決定三番勝負は広瀬八段が1勝。あと1勝で藤井竜王への挑戦が決まる。後がなくなった山崎八段はあと2戦の勝利が求められることとなった。
(ABEMA/将棋チャンネルより)