将棋界の早指し団体戦「第5回ABEMAトーナメント」の本戦トーナメント2回戦第1試合、チーム永瀬とチーム広瀬の対戦が8月13日に生放送された。スコア4-4のフルセットに。チーム永瀬の命運は斎藤明日斗五段(24)に託された。深夜に及ぶ大熱戦は千日手指し直しに。勝利への執念ともいえる熱い姿勢で一局を制し、チームを勝利に導いた。
チームのムードメーカーが見せた涙。この勝利に、この一局に、この一戦にどれほどの重圧がかかっていたかを物語っていた。自軍のエース・増田康宏六段(24)は予選から続き本戦でも負けなしの8連勝。チームメンバーに指名してくれた永瀬拓矢王座(29)に貢献すべく奮闘も、最終局までに個人2連敗。斎藤五段の普段の明るさは消え去っていた。
チームメイトがつないでくれたフルセット最終局。斎藤五段は悲壮感にも似た緊張感を漂わせて対局場へ向かった。対するはチーム広瀬のエース・青嶋未来六段(27)。居飛車も振り飛車も指しこなすオールラウンダーとの対戦は千日手模様となった。頭によぎるのはチームメイトの顔。意を決して千日手を決断し、「自分の玉が詰まないように必死だった」と指し直し局では先後を入れ替え、先手番を持った。「増田さんは3連勝。永瀬先生には研究会でもお世話になっている。それで自分が3連敗でチームが敗退してしまったら、今後しゃべってくれなくなるな」。局後には笑みも交えて語ったが、まぎれもない本心だったのだろう。盤に覆いかぶさるほどの前傾姿勢。体から湯気が上がるほどの熱意をみなぎらせて、最後は青嶋六段を寄せ切って見せた。
日をまたいでの激闘を見守った視聴者からは「感動したー」「もらい泣きしちゃうーー」「これぞシンデレラボーイやね」「あすとーーーー!!」「ファンめっちゃ増えたよーーー!!」「アストさん、外見も中身もイケメンや~」「今日のヒーローだね」「乗り越えましたね」「良かったねえ涙」とコメントが大量に寄せられていた。
「泣いたことなんかないので自分でもびっくりしました。精神状態本当に辛すぎて…追い詰められていました。先週(チーム斎藤の)佐々木勇気七段が『生きててよかった』と言っていて、言い過ぎだと思っていたのに…そういうものなんだ、と思いました。これはキツイ。きつかったです」。声を詰まらせながら、この1勝の大きさを語った。
斎藤五段の執念の勝利に、チームメンバーも歓喜。永瀬王座は「斎藤五段が値千金の1勝をしてくれた。パッションで押し勝ってくれた」と労った。次戦、準決勝ではチーム稲葉VSエントリーチームの勝者と対戦。リーダーは「今日一日の中で収穫がたくさんあった。増田六段の安定した力、12時過ぎてから力を出す斎藤五段。どうやって力をマッチさせるかを考えていきたい」と満足気に微笑んでいた。
◆第5回ABEMAトーナメント 第1、2回は個人戦、第3回からは3人1組の団体戦として開催。ドラフト会議で14人のリーダー棋士が2人ずつ指名。残り1チームは、指名を漏れた棋士がトーナメントを実施、上位3人がチームとなり全15チームで戦う。対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで行われる。チームの対戦は予選リーグ、本戦トーナメント通じて5本先取の9本勝負。予選は3チームずつ5リーグに分かれて実施。上位2チーム、計10チームが本戦トーナメントに進む。優勝賞金は1000万円。
(ABEMA/将棋チャンネルより)