ネット販売などに押され、本屋が苦境する中で、“独立系書店”というジャンルが急増中だ。バランスよく書籍を取り扱う一般的な書店とは違い、個性的で専門的な店づくりを行う独立系書店は、2021年は78店と前年比で2倍となっている。
独立系の強みとは何なのか、経営面で問題はないのか。14日の『ABEMA Prime』は「カストリ書房」店主の渡辺豪氏に聞いた。
カストリ書房は2016年開業の「遊郭専門書店」で、吉原遊郭の跡地に店を構える。遊廓・赤線・歓楽街といった遊里史に関する文献史料を専門に販売するほか、オリジナル作品の出版も行う。客層は30代女性が8割を占め、リピーターより新規客が多いそうだ。
開業の経緯について渡辺氏は「12年ぐらいかけて全国の遊郭があった場所を取材して、趣味にしていた人間だが、資料探しにものすごく苦労した。自分以外にも同じような人は多いのではないか、“自分が資料を提供する側に回ったほうが役に立てるのではないか”と思って本屋を作った」と説明。コロナ禍でも「経営的に立ちいかなくなったことはなかった」という。
独立系の本屋が増えていることには、「大型書店には大型書店のいいところがあると思うが、そこで対応しきれないような欲求というか、本を読みたい動機があると思う。昔の“広く浅く”から、今は“狭く深く”がニーズに合っているのではないか」との見方を示す。
「本を探す時に、理由を言語化して言える人はそんなに多くはないと思う。お客さんに『どんな本をお探しですか?』と声がけしても、明確に答えられる人はいない。これは私の見立てだが、ジェンダーの考え方がどんどん変わってきて、それに巻き込まれたというか、ある種受け止めてきた世代が20代、30代の人や30代の女性じゃないかなと。今までの価値観がなくなった時に“宙ぶらり感”を覚えてしまう人も多い。過去の遊郭はジェンダーを抜きに語れないものなので、手に取ってみようというのが動機として働くのではないか」
では、売上はどうなのだろうか? 「自慢はできないが、家族が路頭に迷わない程度には食べていけている」。
本屋はこの先も減り続けていくのだろうか。ブックジャーナリストで本屋大賞理事の内田剛氏は「下げ止まると思う。嬉しいのは昨年、“TikTok売れ”が起きて、10代の読者が本に関心を持つようになった。ただ、TikTokerの方に聞いたら、TikTokで本に興味を持ってもどこで買ったらいいかわからない10代が多いということで、愕然とした。令和は、大人たちが選ぶ・探す喜びや楽しみを盛り上げていく、そういう原点回帰の時代なのではないかと思う」との見方を示す。
一方で、書店の構造に課題もあるといい、「やはり利益率が低い。これはヒューマンエラーというよりもシステムエラーなので、もっと書店に利益が落ちるような構造に変えていかないといけない。あと万引き問題は本当に切実だ。組織的にやったりなど悪質なものが増えていて、僕が店長の頃はかなり悩まされた。買い取ってしまう側にも問題があって、今日発売の未開封の写真集を売りに来るというのは普通に考えたらおかしな話だ。そういったルール化がないがしろにされてきたのではないか」と指摘する。
渡辺氏は「おっしゃったようにどうやって利益を上げるかということだと思う。今までの本屋さんみたいに駅前の良い場所、一等地に構えて接触を増やすよりは、ある程度テーマで区切った本屋であれば関連するような土地にする。うちだったら吉原遊郭があった場所に作ったが、そうやって集客していくほうが可能性はあると思う」と語った。(『ABEMA Prime』より)
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