将棋界の早指し団体戦「第5回ABEMAトーナメント」本戦トーナメント決勝が9月24日に行われ、稲葉陽八段(34)、出口若武六段(27)、服部慎一郎四段(23)の3人によるチーム稲葉が初優勝を果たした。斎藤慎太郎八段(29)率いるチーム斎藤との決勝戦を5勝1敗と圧勝。リーダーの稲葉八段は「チーム全員で勝ち取った優勝だなと思います」と喜びを語った。
忍者さながらの装束に身を包み、忍び手拭いで口元を覆っているが、喜びの表情は想像に容易い。第5回大会全15チームの頂点に立ったのは、チーム稲葉だった。関西所属のメンバー3人で結成された「サンライズ・ワン」は、最年少・服部四段の爆発力を原動力に予選から圧倒的な強さを見せつけ、少ない対局数で勝ち上がることから“省エネ”と言われることもあった。
稲葉八段は、「このチームはフルセットのような精神的に厳しい戦いは経験していないので、そういう戦いになるとチーム斎藤に分があると思っていた。できるだけ早めにきめないと、と思っていた」と決勝戦の戦術を明かし、名采配も大きな勝因のひとつだったようだ。
さらに、「服部さんは恒例の3連投3連勝。出口さんは勝てなかったですが、斎藤さんとの最終戦(第6局)は出口さんと一緒に研究した将棋。だから、チーム全員で勝ち取った優勝だなと思います」とメンバーを称えた。
ABEMAトーナメント初出場で優勝メンバーとなった出口六段は「勝てないのは棋士として辛いところもあるが、チームメイトが頑張って下さった結果。練習をたくさんやったのでそれが結果に結びついたと思う。機会があればまた頑張りたい」と喜びを語った。チームの元気印として、さらには全戦を通じてMVP級の活躍を果たした服部四段は「ほとんど連投でしたけど、優勝できたことが嬉しく思います。チーム名の“サンライズ・ワン”よりニンニンが目立ってしまったけど、自分としてはすごく嬉しいです」と笑いを誘っていた。
優勝賞金1000万円の賞金ボードを手にした稲葉八段は、「ギリギリの戦いになってもチームを明るく、ということを考えていた。ドラフトで選んだ時は伸びしろを期待していたが、予想を超えるような勢いで成長してくれた頼もしいチームメイトです。2人とも公式戦でも大活躍していて、私も2人とたくさん練習して公式戦での勝率も上がった。チーム全体として成長できたと思います」と改めて喜びを噛みしめていた。
チームとしての活動を最高の形で締めくくり、また明日からは厳しい戦いを繰り広げるライバルへ。それぞれが研さんを積み、来年はきっとさらにたくましい姿を見せてくれることは間違いない。
◆第5回ABEMAトーナメント 第1、2回は個人戦、第3回からは3人1組の団体戦として開催。ドラフト会議で14人のリーダー棋士が2人ずつ指名。残り1チームは、指名を漏れた棋士がトーナメントを実施、上位3人がチームとなり全15チームで戦う。対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで行われる。チームの対戦は予選リーグ、本戦トーナメント通じて5本先取の9本勝負。予選は3チームずつ5リーグに分かれて実施。上位2チーム、計10チームが本戦トーナメントに進む。優勝賞金は1000万円。
(ABEMA/将棋チャンネルより)