政権発足から1年。岸田総理は自身の政務担当の秘書官を交代し、自民党総裁選で父を支えた長男・翔太郎氏を起用した。現在31歳で、慶応大学卒業の元商社マン。今後は政務担当秘書官として、機密に関する事務の取り扱いや関係部局との調整に従事することになる。
【映像】当時の岸田政調会長の隣で挨拶する長男・翔太郎氏(2020年9月)
岸田総理は「危機管理の迅速かつきめ細かい報告体制、党との緊密な連携、ネット情報、SNS発信への対応など諸要素を勘案し、総合的に判断した」と述べ、「適材適所」の起用だと強調している。
ネット上では「親ガチャ」などの声もあがるが、会社では社長の息子や娘が後を継いでトップや役員になることも。総理秘書官の仕事について、10日の『ABEMA Prime』は議論した。
■長男登用の岸田総理は「むしろ気弱になっておられるのかなと」
今回の人事について、小泉政権で総理秘書官を4年務めた元国会議員の小野次郎氏は「マスコミや野党は『身内に甘い』という角度で取り上げるが、私はむしろ気弱になっておられるのかなと心配している。総理大臣は1億2000万人の他人のために働く仕事で、大事な仕事も“頼むぞ”と部下である他人を信頼しないといけない。危機管理でディフェンスラインをどこに置くかということがあるが、肉親しか頼りにならないと。つまり、“自民党の方の話が信頼できない。官僚の話はもっと信頼できない。信頼できるのは息子の意見だ”と、防衛線が一番手前に下がってしまっている」と推察する。
総理大臣秘書官の主な仕事は、機密に関する事務の取り扱いと関係部局との調整やマスコミ対策で、前者に関しては大きな事件や事故があればいつでも連絡が来るほか、それを総理に伝えるかの判断も行う。
小野氏は「政務秘書官固有の担当は自民党との関係と、岸田総理の衆議院議員としての選挙区に関する連絡だ。あとは、いろいろな秘書官が用務を入れた総理の日程を、政務秘書官も含めて調整する」と説明。
田端大学塾長の田端信太郎氏は「31歳の慶応出で元商社マンであれば、いろいろとプライベートなお付き合いがあると思う。そんな中で、訓練や教育を受けていないのに情報の取り扱いは大丈夫なのか」と不安視する。
小野氏は「経歴や年齢が若い方の場合、国の機微な情報、総理にだけ上がってくるような報告をいつも知り得る立場にはいないと思う」と答えた。
プロデューサーで慶應義塾大学特任准教授の若新雄純氏は「親が総理大臣であるということで、必要な能力がないのに抜擢されて国民に不利益が生じるのであれば問題なだけだ。誰が本当に適役なのか、そもそも人事はいい加減で曖昧なものだと思っている。選択された理由が“お父さんが総理だった”というのは、『いいな、贔屓されたな』程度の話だ」との考えを述べた。
■ネットの“親ガチャ”の声には「同情している面もある」
ネットであがる批判について、小野氏は「同情している面もある」と話す。
「大学を出て8、9年目だと、総理秘書官としてもらえる給料は、公務員試験を受けてキャリアで入った8、9年目と同じくらいで、金銭的にそんなにいい目は見ないだろう。また、31歳で“普通に遊びたい”という中で、ガチャンと重いものを背負わされて動けないという感じではないか。ガチャと言えるようないいものではない」
また、若新氏は「親ガチャという言葉の使い方をみんな間違っているんじゃないか」と問題提起した。
「親ガチャのせいで“頑張っても意味ない”という文脈が多いが、逆に親ガチャだからこそ頑張れる。スタートラインがみんな平等だったら辛くないだろうか? 全員同じ条件で生まれてきたら、20歳、30歳の時の結果は完全に本人の努力のせいになる。“生まれ持った環境や能力が違うから、努力にかかわらず結果も違う。だから、誰と比べても仕方ないし、自分の人生は自分のものでしかない”と思うから、どんな結果でも楽しめる。競争ほど残酷なものはなく、スタートラインがバラバラだからいい。“親ガチャだから気にしすぎずに頑張る”くらいの意味で使ったほうがいいと思う」
(『ABEMA Prime』より)
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