AIやロボットの技術革新によって、仕事が奪われるかもしれない…。そんな危機感からスキルの学び直し「リスキリング」に取り組む人が増えている。
「個人のリスキリングに対する公的支援については、人への投資策を“5年間で1兆円”のパッケ―ジに拡充する」(岸田総理)
臨時国会の所信表明演説で、岸田総理が支援を打ち出した「リスキリング」。仕事のデジタル化やAIの活用が進む今、失われる雇用がある一方で、新しいスキルを必要とする職種も誕生し、職業のミスマッチの拡大が懸念されている。
三菱総合研究所の試算によると、2030年には事務職や生産職の分野で200万人以上が余剰人材に。一方で、専門技術職は不足する見込みで、この需要に合わせたキャリアシフトを迫られる人が出てくる可能性がある。
「コロナ禍で非常にニーズが高まっていて、2019年からの3年で約2倍に会員数が伸びている」(株式会社Schoo広報・大金歩美氏)
社会人に向け、オンラインで学びの場を提供している株式会社Schoo。ExcelやPowerPoint、コミュニケーションなど今すぐ仕事で役立つスキルから、NFTやWeb3といった新たな技術や概念まで、幅広いジャンルの解説を生放送や動画で公開している。
受講生は、その道のプロである講師に直接質問することができ、コメント欄では受講生同士のコミュニケ―ションも発生。「一緒に学ぶ仲間がいる学校のような空間がモチベーションの維持に繋がる」と大金氏は話す。受講生の中にはデジタル化に合わせた既存のスキルのアップデートの他、新たな領域の学びを進める人も多いという。
「これまではプログラミング・データを扱う仕事は専門的な領域の仕事だった。エンジニア以外の人もデータの活用方法、データの作り方の裏側、基礎的なことを学ぶことで、実際にプログラムを書くわけではないが、今後増えてくる“デジタル人材”と言われる人たちと一緒に仕事がしやすくなる。もしかしたらそっちに転職する方もいると思う」(大金氏)
今の仕事に活かすスキルを身につけるか、新たな成長分野に飛び込むためのスキルを身につけるか。デジタル時代に必要とされる人材となるためには“学びの継続”がカギを握りそうだ。
「時代の先が見えなかったり、終身雇用が崩壊してきたり、今までの前提が覆るような(コロナ禍の)3年だった。今のスキルではこの先やっていけない、何か新しいことを始めなきゃいけないという方が始めている傾向。これまでは資格取得を目指したような“終わりがある学び”が一般的だったが、“学び続けるための学び”みたいなものがより一般化されてくるのでは」(大金氏)
『ABEMAヒルズ』に出演したPIVOTチーフ・グローバルエディターの竹下隆一郎氏は、学びに関するコンテンツを出す中でリスキリングの高まりを実感していると説明。また、将来は「問題発見力」や「的確な予測」、「革新性」などの能力が求められるという予測について、次のように指摘する。
「2050年には、機械的なスキルから起業家のイノベーティブなスキルに変わっていくと思う。今の経営者・人事こそ発想を変えないといけない。今までのような雇用でそういう人が来るのか、いくつか職業を掛け持ちしている人のほうがこういう能力を持っているんじゃないか。“新しい能力を持っている人が何処にいるのか”という発想に変えることで、日本の会社の雇用の仕組みそのものを変革していくことにも繋がる」
今後、人にしかできない仕事が求められていく中で、「何をすればいいのか?」とたじろいでしまう人もいる。竹下氏は「学びを変えることも大事」だと話した。
「最先端のテクノロジーやプログラミング、ファイナンス・金融、英語などは思いつくと思う。一方で “聞く力”、例えば会議やミーティングでチームのアイデアを引き出す『ブレインストーミング』のやり方など、人間にしかできない『ソフトスキル』も求められている。かつては経験やキャラで決まっていたものが体系化されてきているので、それを学ぶ人も増えている。大事なことは1回、自分の考えを問い直すこと。プログラミングや聞く力だけではなく、自分が持っているジェンダーバイアスや偏見を取り除くのもスキルだと思う。どうしても今のリスキリングはお勉強みたいなイメージだが、より深い問いが必要。もう1つ、大学院の良さはあると思うので、社会人が大学院に行きやすくするといったサポートも必要だと思う」
(『ABEMAヒルズ』より)
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