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 9月25日のドルフィンズアリーナ(愛知県体育館)で拳王を撃破して2年9カ月ぶりにGHCヘビー級のチャンピオンベルトを腰に巻いた清宮海斗は「ノアで最強を名乗って、このベルトを守っていくんだったら、藤田和之は絶対に避けて通れない」と、すぐさま10月30日の有明アリーナにおける初防衛戦の相手に藤田を指名した。

 前哨戦は10・7後楽園ホールの清宮&稲村愛輝vs藤田&鈴木秀樹からスタート。清宮は藤田の領域であるレスリングで食らいつき、ジャーマン・スープレックス、バックドロップで叩きつけられてもジャーマン・スープレックス2連発、スタンディング式のシャイニング・ウィザードで対抗。最後は稲村が藤田のビーストボムで轟沈させられたが、GHC王者として一歩も引かないファイトを見せた。

 そして迎えた10月16日、福岡国際センターにおける第2ラウンド。今回は清宮&稲葉大樹&稲村vs藤田&杉浦貴&田中将斗の6人タッグだ。

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 振り返ると、これまで清宮と藤田にはこれといった接点はなかった。20年2月16日の後楽園ホールで潮崎豪&清宮vs藤田&杉浦のタッグマッチで初対決しているが、この試合は藤田が潮崎のGHC王座に挑戦する前哨戦だっただけに藤田の視界に清宮は入っていなかった。ちなみに試合は藤田がスリーパー・ホールドから潮崎にレフェリー・ストップ勝ちしている。

 藤田は杉浦軍として金剛やM’s allianceとの試合が多く、21年に清宮と藤田の対戦はなし。今年22年に入って1月5日の後楽園ホールで正規軍vs杉浦軍&M’s allianceの10人タッグ(清宮&潮崎&マサ北宮&稲葉&稲村vs武藤敬司&丸藤正道&杉浦&藤田&田中)という形で対戦したが、これは1月8日の横浜アリーナでのノアvs新日本プロレスの対抗戦に向けて士気を高める試合という要素が強く、特に清宮vs藤田がクローズアップされたわけではない。そして、何より藤田は若い清宮に興味を持っていなかったと言ってもいいだろう。7月21日の後楽園ホールでは藤田&杉浦&清宮のトリオが実現して潮崎&田中&清宮と対戦しているが、それぞれの選手の『N―1』に向けての試合であり、藤田と清宮にドラマが生まれることはなかった。

 だが、今回の清宮の逆指名で藤田の意識が変わった。藤田は2月23日の名古屋国際会議場イベントホールで中嶋勝彦に勝ってGHCヘビー級王座を奪取。田中の挑戦を退けて初防衛に成功し、4月30日の両国国技館で潮崎の挑戦を受けることになっていたが、新型コロナウイルス感染によって欠場となり、王座返上を余儀なくされた。その後、藤田は負けずに失ったベルトへの挑戦を口にすることはなかったが、指名されたとなれば話は別。しかも王者は「これからのノアを創っていくために藤田は俺が倒す!」と喧嘩を売ってきたのだ。

 10・7後楽園で清宮の味見をした藤田の10・16福岡でのファイトは凄まじかった。ファーストコンタクトではグラウンドで圧倒し、5分過ぎの2度目の激突ではボディスラムで叩きつけ、逆片エビ固めで締め上げ、監獄固めで苦痛を味わわせた。

 3度目の激突では清宮がミサイルキック、ジャーマン・スープレックス、シャイニング・ウィザードで反撃に転じ、馬乗りになってエルボーを乱打したものの、体勢を入れ替えられて逆襲にあってしまった。清宮を起こした藤田は痛烈なビンタからラリアットでキャンバスに叩きつけ、顔面蹴り2連発から膝でフォールの体勢へ。カウント2で引き起こすとビーストボムで叩きつけて完璧な3カウントを奪った。

 屈辱的な負けを喫して大の字になった清宮の髪の毛を掴んで抱き締めた藤田は頬を擦りつけてマーキング。今、ノアに入団以降は潜めていた藤田の野獣性が清宮によって剥き出しになっているのだ。

 10・30有明アリーナのタイトルマッチ本番に向けて「おいしく食べられそう?」と質問が飛ぶと「俺はナマがいいな」と答えた藤田。まさに野獣だ。

 今回の逆指名にあたって清宮は「いろんな扉を俺が開いて、ぶち壊していくから。見ていてください!」と言っていたが、清宮はとんでもない扉を開いてしまった……。

文/小佐野景浩
写真/プロレスリング・ノア

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