将棋の藤井聡太竜王(王位、叡王、王将、棋聖、20)が10月21・22日に行われた第35期竜王戦七番勝負第2局で、挑戦者の広瀬章人八段(35)に105手で勝利した。竜王経験者の強豪・広瀬八段の作戦を打ち破っての完勝に、ABEMAの中継に出演した木村一基九段(49)は「藤井竜王の強さというか、怖さというか…」とその腕力に感服していた。
藤井竜王の1敗で迎えた第2局は京都対局。時折、野鳥のさえずりが響き渡る世界遺産・仁和寺が舞台となった。先手番の藤井竜王が角換わりを志向すると、広瀬八段は3三金型早繰り銀をアレンジし、腰掛け銀に構える新構想を披露。藤井竜王は「序盤から経験のない形になった」と振り返った。解説を務めた木村九段も「広瀬さんの作戦選択に感心させられた。藤井さんの経験のない形に見事に持ち込み、後手番としての作戦の立て方が素晴らしいと思った」と話し、藤井竜王は1日目にして持ち時間の半分以上を投入して読みを深めた。
互角のまま対局2日目を迎えると、藤井竜王は一見手渡しとも見える歩を打ち付ける。広瀬八段は「先手が曲線的なので悪くないと思っていたが…」。木村九段は「間接的な手だが、できることがあるならやってみなさい、という手。普通は怖くて指せない手なので凄い」とコメントした。
難解な中盤戦で踏み込んだのは藤井竜王。後手陣の上部で戦いを起こし「持ち駒が増えて少し好転してきたと思った」とペースを握った。終盤戦では金を攻守の軸にポイントを積み重ねていく。同じく解説を務めた飯島栄治八段(43)は、「藤井竜王は駒の扱いが本当に上手い。自分の駒は働いているのに相手の駒は遊ばせていて、終わってみると全部が急所に利いていて無駄がない」とその美しさを表現。受け無しとなった広瀬八段は、静かに投了を告げた。
藤井竜王の完勝となった第2局に、木村九段は「広瀬さんの作戦のうまさが際立ったと思うが、その後の気が付いたら良くなっているという藤井さんの強さが出た。相手に堂々と手渡しをしてその後勝ってしまうというのは、強さというか怖さというか…」と藤井竜王の腕力に感服。さらに、「感想戦でもはっきりとした広瀬さんの改善策が見当たらなかったので、戸惑っているかもしれない。気持ちの立て直し方が難しいと思うが、今後の戦い方にも注目したい」と続けた。
若き絶対王者が見せた圧巻の指し回しに、ファンも「気付いたら斬られてる感じ」「かっけえええ!」「パズルのような組み合わせ」「見事だったなぁ」と大興奮の様子だった。
シリーズは序盤戦の2局を終えてともに1勝1敗。藤井竜王は今期の防衛戦で3戦連続の黒星発進となったが、2戦とも以降の連勝で連覇を果たしている。本シリーズでも快進撃が見られるか、はたまた挑戦者が4期ぶりの復位を果たすのか。ますます目の離せない戦いが続く。
(ABEMA/将棋チャンネルより)