「夢の結晶」「自分自身の魂」サッカー日本代表 歴代ユニホーム開発担当者が明かす思いと完成秘話
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 いよいよ11月20日に開幕するサッカーW杯カタール大会。日本代表が世界へ挑戦する姿はもちろん、もう一つの主役とも言えるのが選手たちを彩るユニホームだ。そこには大会ごとにコンセプトが込められていることをご存じだろうか。2002年日韓大会は「富士山」、2010年は「革命に導く羽」、2018年は「勝色」、そして2022年は「ORIGAMI」。日本代表の“戦闘服”開発に携わった担当者3人に、ユニホーム完成までの知られざる裏側、胸に秘めた思いを聞いた。

【動画】2010年「革命に導く羽」、2018年「勝色」、2022年「ORIGAMI」

 サッカー日本代表とともに歴史を歩んできたユニホーム。「SAMURAI BLUE(サムライブルー)」の元に、日本の国土を象徴する海と空を表す青色が採用されている。そんな日本代表にユニホームを提供するのがアディダスジャパン株式会社だ。日本サッカー協会と1999年からオフィシャルサプライヤー契約を締結。開発・制作を一手に担い、送り出したユニホームは全13種類を数える。2010年「革命に導く羽」を担当した山下崇氏、2018年「勝色」の山口智久氏、そして2022年の新ユニホーム「ORIGAMI」の担当者・高木将氏が込めた開発コンセプトとは――。

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 さかのぼること12年前。2010年南アフリカ大会では、岡田武史監督の指揮の元で2大会ぶり2度目の決勝トーナメント進出を果たした。ユニホームのコンセプトは「革命に導く羽」。日本サッカー協会のシンボル「八咫烏(やたがらす)」をイメージし、全面に羽があしらわれたデザインが採用された。

 山下氏「岡田監督はベスト4を目標に、日本サッカー界に“革命”を起こすということを掲げられました。そこから、今までの辛い時代を見てきたエンブレムの“三本足のカラス”にフォーカスして、いろんなものを積み重ねた上に革命が成り立つんだ、というコンセプトを考えました」

 日本代表のユニホームを手掛けることが夢だったという山下氏。営業出身ながら地道な努力を続け、大役に抜擢された。

 山下氏「巻き込む人数が多く30~40人規模のプロジェクトチームを開発責任者が率いていく感じなので、当時は苦労したなという思いがありますね。実際の選手たちを見た時は本当に鳥肌が立つ感じでした。自分がやってきたものが、あの日本代表が着ている、というのは本当に何とも言えないものがありましたね」

 “羽”をまとった選手たちは、南アフリカの地で躍動。2度目となる決勝トーナメントを決め、世界の舞台で大きく世界に羽ばたいてみせた。

 そして、今も記憶に新しい2018年ロシア大会。担当したのは、当時シューズ部門に在籍していた山口氏だ。2014年ブラジル大会では、1勝もできずにグループステージ敗退。「4年度の2018年には、もう一度日本中で代表を応援サポートして、勝って喜ぼうというのがコンセプトの始まりでした」。そして生まれたのが“勝色”ユニホーム。かつて、戦国武将が戦に出る際の着物に使われた「勝色」と呼ばれる深く濃い藍色をベースカラーに採用。日本の伝統、そして勝利への祈りが込められたデザインとなった。

 山口氏「“青”にこだわりぬいて、そこに勝つための”魂”というものを刷り込ませて、古代の武士たちのストーリーも交えました。藍染は“勝色”と言われていて、そこからインスパイアされたコンセプトに至りました」

 ロシア大会グループステージ初戦、日本はコロンビアに2-1で勝利。W杯でアジア勢が南米勢に勝利するのは、当時史上初のことだった。

 山口氏「現地で観戦していて、やはり感極まるというか…。“勝色”というコンセプトぐらいですから本大会で勝つことが一番のこだわりだったので。もちろん勝つと信じてましたけど、半分以上は心配な気持ちがありましたからね」

 2大会ぶりとなる決勝トーナメント進出を果たした日本代表。日本中をサッカー一色、見事“勝色”に染め上げてみせた。

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 そして、2022年。日本にとって7度目のW杯挑戦を彩る新たなユニホームが誕生した。サッカーに関わる仕事がしたいと中途入社した高木氏が作り上げたコンセプトは「ORIGAMI」。初めて日本でW杯が開催された2002年日韓大会、決勝戦の地・横浜で行われた表彰式で舞い上がった約270万羽もの折り鶴は、日本サッカー界の歓喜をもたらす象徴となった。そして今回、ORIGAMIには、かつての「ドーハの悲劇」の舞台となったカタールの地を「歓喜の場所」に変えてほしいという祈りが込められているという。

 高木氏「過去のモデルや日本サッカー界が築き上げてきた歴史をしっかりリスペクトして、新しいものを作りたいなと思って開発をスタートしました。ユニホームには折り紙の展開図や折り線を表現しています。でも、折り紙の最終形態、例えば“折り鶴”の形は付けないでくれ、ということは伝えさせていただきました。最終的な完成形は、選手が着て、ピッチで躍動する時に見える形にしたかったので、そこをリクエストしました」

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 選手たちが躍動することを願い、作られたユニホーム。「ORIGAMI」の仕上がりの良さは先輩たちの“折り紙つき”だ。

 山下氏「日本サッカーらしい、新たな代表を作ってくれるジャージだなという印象です。評判も良いですし、高木も笑顔が絶えないです」

 山口氏「ユニホームというものは常に最新が一番、100点満点と思っていますが、もう過去のユニホームを超えて歴代最高が仕上がったと思っています。あとは本番の結果を楽しみにするだけです」

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 ピッチに立つ者、裏側から支える者、それぞれの思いがつまったW杯。3人にとって、日本代表ユニホームとは――?

 山下氏「子供の頃からの夢の結晶であり、偉大なる通過点です。これが良い思い出になるより、次の自分を目指して欲しいなと思っています」

 山口氏「言葉通り日本を代表するユニホームです。みんなの夢や憧れ、思いがすべて結集されて形になったものだと思っています」

 高木氏「自分自身の魂を込めたものです。これを着て選手たちが躍動してほしいですし、少年少女たちがまたサッカーをやりたいと思ってもらえるような、そんなきっかけになるユニホームになってほしいなと思っています」

 「ORIGAMI」に勝利への思いを込めて。歓喜の瞬間は、もうそこまで迫っている。
(『ABEMAヒルズ』より)

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