将棋の藤井聡太竜王(王位、叡王、王将、棋聖、20)が、12月2、3日の両日に行われた第35期竜王戦七番勝負第6局で挑戦者の広瀬章人八段(35)に勝利し、最高峰タイトル・竜王位の初防衛を決めた。シリーズ成績は4勝2敗。この結果で、通算タイトル獲得数を11期に伸ばした。
藤井竜王が、シリーズ4勝2敗で最高峰タイトルの防衛に成功した。本シリーズは第31期竜王の広瀬八段を挑戦者に迎え、10月初旬から約2カ月にわたり、6局の激戦を繰り広げた。開幕戦は広瀬八段が快勝。深い事前研究で藤井竜王を上回り、4期ぶりの奪還を狙う挑戦者が勢いそのままに星を集めるかと思われた。しかし、第2局で先手番を持った藤井竜王がすぐに追いつくと、第3局は逆転勝利。第4局でも危なげなく連勝を重ねたが、第5局では逆転負け。藤井竜王にとっては七番勝負で初めて2敗目を喫した。しかし、第6局では得意の角換わりで王者の貫禄を見せつけ勝利。嬉しい初防衛を決めた。
決着局の舞台は鹿児島県指宿市の「指宿白水館」。羽生善治九段(52)が2017年度に永世七冠を達成した舞台としても知られている。前局で惜敗した藤井竜王の先手番で、戦型は「角換わり腰掛け銀」に。防衛への決意を表すように、早々に藤井竜王が仕掛けた。対局は竜王の攻め、挑戦者の受けで進行。形勢互角で2日目に突入すると、藤井竜王が意表の飛車切りから強い踏み込みを見せてリードを奪った。広瀬八段も約2時間の大長考から反撃の糸口を探るも、なかなか押し返すことができない。終盤では、復位への望みを託すように随所で勝負手を放ったが、絶対王者は揺るがなかった。藤井竜王は一貫して攻めの姿勢を貫き、圧巻の勝負術を見せつけて完勝を飾った。
終局後、藤井竜王は「内容的にも押されていた将棋が多く、大変なシリーズだったかなと思う。広瀬八段に序盤から工夫をされて、それに対してうまい対応を返せないことが多く課題を感じた。苦しいシリーズだったが、結果を出すことができてほっとしています」とシリーズを振り返った。
挑戦を阻まれた広瀬八段は「スコアは2勝4敗だったが、中終盤のあたりで相手の実力を感じることが多かった。スコア以上に完敗だったと思う。タイトル戦では藤井竜王の方が場数が多いので、風格を感じた。自分の良いところ、悪いところを出し尽くしたシリーズだったが、3局目の敗戦が悔やまれる。そこを勝っていたらフルセットまで行けたかなと後悔があるが、それも実力。今、自分が持てるものは出せたかなと思う」とコメントした。
2022年の藤井竜王は、年頭の王将戦七番勝負で渡辺明王将(当時)を破り最年少五冠に。以降、叡王、棋聖、王位と3つのタイトル防衛に成功させ、獲得タイトル数を10期の大台に乗せた。本局の結果で最高峰タイトルの竜王位も2期目、通算タイトル獲得数を11に伸ばし、長期政権が目される「藤井時代」を盤石のものとしている。
藤井竜王は、「今年は1月からタイトル戦が続いくような形で、大変な将棋ばかりだった。収穫もいろいろいありましたし、大きくコンディションを崩すことなく戦えたのは良かったと思う。今後も、少しでも実力を高められるよに頑張りたい」と意欲を語った。
しかし、若き絶対王者に休まる間はない。12月8日には、年度内六冠獲得に向けて棋王戦挑戦者決定トーナメント敗者復活戦の羽生九段戦が予定されている。敗者復活戦から挑戦権獲得、さらには棋王初奪取を狙いたい。加えて、年明けからは初防衛を目指す王将戦七番勝負開幕も控える。挑戦者にはタイトル通算獲得100期を狙うレジェンド・羽生九段を迎え、将棋ファンならずとも大きな注目を集めることは必至だ。並行して行われている順位戦A級も4勝1敗の首位タイで前半戦を折り返し、名人初挑戦も視野に捉えている。師走から新年へ、ますます多忙な日々を送ることになりそうだ。
◆藤井 聡太(ふじい・そうた) 2002年7月19日、愛知県瀬戸市出身。中学2年生時の2016年10月に史上最年少で四段昇段、史上5人目の中学生棋士となる。2020年度の第91期棋聖戦でタイトル初挑戦。渡辺明棋聖(当時)を破り、17歳11カ月で最年少タイトルホルダーとなった。以降獲得と防衛を重ねて、竜王2期、王位3期、叡王2期、王将1期、棋聖3期の通算11期。棋戦優勝は6回。通算成績は293勝59敗、勝率は0.8323。趣味は鉄道、チェス。
(ABEMA/将棋チャンネルより)