オーバーハンドの左フック一発で脳が揺れ、フリーズ。1ラウンド残り5秒、スタンディングダウンを宣告された欧州女子の有力選手はその後、驚いたような表情を浮かべ自陣セコンドに戻るもファイティングポーズを取ることはできず、レフェリーが試合をストップ。呆気ない幕切れに視聴者からは驚きの声が上がったが、魔娑斗は「はじめて貰ったような衝撃だったのでは?」とその破壊力、さらに敗者の心境を代弁した。
12月3日にエディオンアリーナ大阪で行われた「K-1 WORLD GP 2022 JAPAN ~初代バンタム級王座決定トーナメント~」で、KANA(K-1ジム三軒茶屋シルバーウルフ)とオロール・ドス・サントス(フランス)が対戦。1ラウンドKANAが左フックでサントスからスタンディングダウンを奪うと、そのダメージから相手の戦意喪失を招いてKO勝ち。完全に脳が揺れ、動きが止まった選手を見た魔娑斗が「はじめて貰ったような衝撃だったのでは?」とその破壊力を代弁した。
女子フライ級王者として女子K-1を牽引してきたKANA。2021年の怪我による長期欠場から今年復帰すると2月にRANに判定勝ち、続く6月の大会でスーリ・マンフレディをハイキックでKOし、かつての”倒せる女子絶対王者”の復活も見えてきた。対戦相手のサントスは欧州のキック、ムエタイで複数の王者になった実力者。メジャーなEnfusionの女子ストロー級王者や、GLORYなどにも参戦しているトップの一人だ。
試合前から「ボクシングとムエタイの融合」というテーマを掲げてきたKANAは序盤から真価を発揮する。距離を縮めてローで相手を削りながらパンチの連打。足を使いサントスの打撃をかいくぐる近い距離での攻防。KANAはミドルキックで前へ出続け、距離を縮めての左ジャブ、離れてローと変幻自在だ。この日のABEMAのゲスト魔娑斗も「今まで(KANAに)ああいったジャブはなかった」と技術面の進化について指摘した。
サントスも恵まれた体を活かし前蹴り、ヒザ、パンチの連打と反撃にでるが、KANAの至近距離でのプレッシャーに思うような動きができない。すると1ラウンド後半、コーナーポストを背にしたサントスに、KANAがロー、ミドル、さらにボディ打ち。接近戦でサントスの攻撃を殺すと、再びボディ、アゴに左ストレート。ロープにもたれ掛かった相手にオーバーハンドの右、さらにオーバーハンドの強烈な左フックを打ち込んだ。
次の瞬間、サントスの顔がガクンと上を向き、脳が揺れ、一瞬落ちたような表情。動きが止まったことを受け、スタンディングダウンを宣告される。ダメージは大きい。一度は自身の陣営を見ながらコーナーへ歩きはじめたサントスだが、意識が飛んでいるのかファイティングポーズを取らずにセコンド側をじっと見ながら停止。戦意喪失かパンチのダメージによる思考停止か、続行不可能と判断したレフェリーが試合を止めた。
1ラウンド2分55秒での呆気ない幕切れ。魔娑斗はサントスの状態について「はじめて貰ったような衝撃だったんじゃないでしょうか。ちょっと心が折れましたね」とコメント。コーナーポストに立ったまま事態が読み込めない様子のサントスに視聴者からは「完全に意識が飛んで1ラウンドが終わったと思ってるのかも…」「あれだけ目がイッていたら止めるだろうな」とレフェリーの判断を支持する声が多数寄せられた。
欧州からの刺客に勝利したKANAはマイクで「K-1のチャンピオンが世界で一番強いということを証明したい。今の目標はONEにいるアニッサ・メクセン選手と戦うことです」と女子最強キックボクサーと目される他団体の選手との対戦を希望した。