警察官2人の4発で容疑者死亡、車暴走での発砲は妥当だったのか? “必要と判断される限度”に元特殊部隊員の見解は
【映像】ABEMAでみる
この記事の写真をみる(6枚)

 大阪府八尾市で13日、盗難車の暴走事件があり、現場の警察官2人が発砲して容疑者の男が死亡した。ネットでは「現場の恐怖感は想像を絶する」「警告射撃抜きで4発も発射する状況ではない」などと賛否の声があがるが、日本ではめったに起きない拳銃使用の是非について、17日の『ABEMA Prime』で議論した。

【映像】猛スピードで逃走する車と追うパトカー

 警察によると、巡回中の警察官が盗難車を発見し追跡していたところ、車に乗っていた男が逃走を図ったという。パトカーは一度車を見失うが、信号待ちしているトラックの後ろにいるのを発見し、停車を求めた。しかし、車をパトカーとトラックに繰り返してぶつけてきたため危険と判断し、警告をした上で発砲。男は右脇腹や右腕など3カ所に銃弾による傷を負い、病院に搬送されるも、失血により死亡した。

警察官2人の4発で容疑者死亡、車暴走での発砲は妥当だったのか? “必要と判断される限度”に元特殊部隊員の見解は
拡大する

 発砲に至る経緯について、元埼玉県警察・RATS隊員の田村装備開発・田村忠嗣社長は「撃っていいかは状況によって異なり、まだ情報も不十分なので、良し悪しは言えない。ただ、警察官が現場で“発砲しなければ自分の身や仲間、市民の身を守れない”と考えたのであれば、仕方なかったと思う。車は強い凶器になる」とコメント。

 警察官が武器を使用できる場面として、警察官職務執行法第7条では、「犯人の逮捕若しくは逃走の防止、自己若しくは他人に対する防護又は公務執行に対する抵抗の抑止のため必要であると認める相当な理由のある場合」「その事態に応じ合理的に必要と判断される限度において」と定められている。

警察官2人の4発で容疑者死亡、車暴走での発砲は妥当だったのか? “必要と判断される限度”に元特殊部隊員の見解は
拡大する

 田村氏は「例えば、刃渡り30cmの刃物を持った犯罪者が襲いかかってきた時、剣道4、5段の人が警棒を持っていたとすれば、それで叩けばよかったという判断になる。しかし、女性警察官が同じように警棒で戦えるかというと、“それでは勝てない。撃たなければ勝てない”と。つまり、個人や人数、敵の強さで変わるのが合理的というものだ。必要と判断される限度というのは、警察官個人の考えではなく客観性が必要になる。“私が危ないと思ったから”だけでは足りなくて、多くの方が現場を見て“これは撃っても仕方ない”と思わなくてはならない」と話す。

 Twitterでは「タイヤを狙う手段もあったのでは?」との指摘もあるが、実際にタイヤを撃って車を止めることはできるのか。「ドラマでタイヤを撃ってバーストさせる場面はよくあるが、実際に撃ったらほとんどの場合はゆっくり空気が抜けるので、止めることはできないと判断した方がいい。そこから数百メートル、数キロ暴走する可能性は十分ある」と指摘。

警察官2人の4発で容疑者死亡、車暴走での発砲は妥当だったのか? “必要と判断される限度”に元特殊部隊員の見解は
拡大する

 防衛研究所・防衛政策研究室長の高橋杉雄氏は「警察の拳銃使用及び取扱い規範で印象深いのが、射撃の時に“相手以外の者に危害を及ぼし、又は損害を与えないよう、(中略)必要な注意を払わなければならない”と書いてある。つまり、撃った弾がどこに行くかをきちんと考えないといけないということだが、一方で、相手のダメージが最小限になるようにということはどこにも書いていない」と投げかける。

 これに田村氏は「“必要最小限度の使用にとどめろ”という規則はあるが、ケースバイケースで難しい考え方だ。例えば、人質を取っている犯罪者が、人質にチョークスリーパーをして拳銃を頭に向けているとする。この時に腕を狙ったら、犯罪者が怒ってそのまま人質を撃ってしまうかもしれない。そう考えると、眉間辺りの場所にある脳幹を撃って犯罪者を即死させれば、人質は必ず助かる。犯罪者の人権と人質の人権、どちらを守るかといったら、当然後者だろう」と答えた。

警察官2人の4発で容疑者死亡、車暴走での発砲は妥当だったのか? “必要と判断される限度”に元特殊部隊員の見解は
拡大する

 今回、車両を挟み込んで警察官2人が2発ずつ発砲し、これによる失血が死因となった。田村氏は「結果的に死んでしまったのは仕方がないのではないか。一番大事なことは、これが正当防衛になっているかどうか。撃たなければ自分や仲間、または市民の方々を助けられなかったり、暴走して多数の人を轢いてしまう、逃したことで小学校などに立てこもって人質救出の必要が出てくるというのは非常に困ることだ。ただ、殺さなくてもいいと思っているのにあれだけ何発も撃ったのであれば、それはまた問題。そこはこれから取り調べで明らかになってくると思う」との見方を示した。

 アメリカの警察で導入されている「テーザー銃」は有効ではないのか。「スタンガンを銃みたいに発射するものだが、効かない人がいる。アメリカでナイフを持った相手に撃ち込んだものの、警察官が刺されたというのは何回もあることだ。銃器を使った事件は日本ではほとんどないが、存在はする。凶悪犯罪が起きた時、警察官が銃を持っていないと対応できないので、持っていた方がいいと思う」。

警察官2人の4発で容疑者死亡、車暴走での発砲は妥当だったのか? “必要と判断される限度”に元特殊部隊員の見解は
拡大する

 高橋氏は「警察官職務執行法は1948年、つまり日本国憲法の中で制定された法律だ。武器使用基準は国家公安委員会の規則なので、大臣・閣僚級の委員長の中で作られている。これを変える・変えないという話は有権者の政治参加の問題そのもので、もし厳しくしたい・緩くしたいということであれば、警察官職務執行法についての議論をすべきだ。決して他人事ではないので、社会のためにどこまでの判断を警察官に認めるべきか、を考える機会になればいいと思う」と述べた。(『ABEMA Prime』より)

もし目の前で人が倒れたら? “居合わせた人=バイスタンダー”の役割とは
もし目の前で人が倒れたら? “居合わせた人=バイスタンダー”の役割とは
生配信YouTuber「足が浮いて何もできなかった」 梨泰院雑踏事故から考える動画拡散
生配信YouTuber「足が浮いて何もできなかった」 梨泰院雑踏事故から考える動画拡散
法より“空気”が支配? エスカレーター“どっちに立つか”に代表される同調圧力
法より“空気”が支配? エスカレーター“どっちに立つか”に代表される同調圧力
【映像】法より“空気”が支配? エスカレーター“どっちに立つか”に代表される同調圧力

■Pick Up

【Z世代マーケティング】ティーンの日用品お買い物事情「家族で使うものは私が選ぶ」が半数以上 | VISIONS(ビジョンズ)

この記事の写真をみる(6枚)