ストーカー被害リスクのチェックリストと対応策 被害者・加害者をカウンセリングする臨床心理士が解説
ストーカーリスクを見極めるチェックリスト
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 福岡県博多駅前で、元交際相手の男に女性が刺殺されたとみられる事件。男は、事件前に何度もストーカー行為に及んでいたという。

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 警察によると、寺内進容疑者は16日、福岡市博多駅前の路上で元交際相手の川野美樹(38)さんを刃物で十数回刺すなどして、殺害した疑いが持たれている。寺内容疑者は、「刺したことに間違いありません」と容疑を認めている。

 川野さんは、警察に複数回相談をしていて、去年の11月には、元交際相手の男にストーカー規制法に基づく禁止命令も出されていた。

 このニュースを受け、ニュース番組『ABEMAヒルズ』に出演した臨床心理士・公認心理師で明星大学・准教授の藤井靖氏は「(ストーカーに対する)法的措置の限界を感じた」と明かした。

「容疑者の特性で、優しい部分と厳しい部分の両立だとか、衝動的な部分と計画性の部分の両側面があるとか。犯罪や、それに類する行為を継続的に行ってしまう心理的特性も見え隠れするような容疑者の情報だった」

ストーカー被害リスクのチェックリストと対応策 被害者・加害者をカウンセリングする臨床心理士が解説
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 ストーカー被害者や加害者のカウンセリングを行ってきた藤井氏は、その経験に基づき作成した「ストーカーリスクを見極めるチェックリスト」を番組で紹介した。

―――ストーカーリスクを見極めるチェックリスト―――
①    恋人に対して激昂と弱音・謝罪を日々繰り返す。
②    過去の境遇(生い立ちや学校生活)や仕事に不満を抱えている。
③    恋人への電話やメールの即レスにこだわる。
④    「〇〇すべき」「〇〇ねばならない」とよく言う。
⑤    恋人や友人に関することでフットワークが軽い。
⑥    何らかの反社会的行為、または自傷の履歴がある。
⑦    驚くほどの強い意志と計画性を感じる時がある。
――――――――――――――――――――――――――

 藤井氏は、このチェックリストの大きなポイントについて、こう話した。

「一つひとつを見れば、例えば、即レスも『マメ』だと捉えられたり、フットワークが軽いのも『自分のこと大事にしてくれているのかな』と感じたり、ポジティブにとらえられることが多い。ただ、チェックリストに挙げられている要素を同時に複数持っていて、関係悪化をきっかけにしてそれがネガティブに出てしまうと、強い執着や、極端な言動に繋がる場合がある」

 相手が恋人など親密な関係であるほど、チェックリストの内容をネガティブに捉えることが難しいという。では、加害者本人は気づくことができるのだろうか。

「「自分にもそういうところがある』と思ったとしても、それが危険だとか、自分が暴走する、という予測はできないと思う。何かしらの加害行為をしてしまった本人に聞いても、『当てはまらない』という判断になることが多い」

 加害者本人では、気づくことが難しいストーカー行為。大事なのは、被害者や周りの人が気づくことと話す藤井氏。

「やはり、普段の言動に何らかの違和感はあると思う。この1つ1つに大きな問題があるわけではないが、7つのうち5つ以上あてはまるとすれば、『この人はどんな人か』ともう一回考えてみることも必要だと思う。もし、危険だと感じられれば、少しずつ距離を置く、早めに離れるというのも一つの選択肢」

 違和感に気付いた場合、対処法を知っておくことが大事になる。藤井氏は、ストーカーの心理的特性を踏まえた3段階の対応を解説した。

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―――ストーカーの心理的特性を踏まえた3段階の対応―――
■リスク低(「別れたくない」など関係の解消を拒む)
・「別れたい、気持ちは変わらない」とはっきり伝える。
・物やお金の貸し借りの精算。
・他人を介入させずカフェやファミレスで話す。

■リスク中(脅すようなメール、待ち伏せ、頻回の電話など)
・「まだ自分で対応できると思う段階」で、専門家(警察、弁護士、心理士など)に相談。
・記録を取り、家族や職場の信頼できる人に状況を共有しておく。
・別れ話以外の会話・謝罪などがあっても直接話さない。

■リスク高(家に入ってくる、傷害、監視、名誉毀損など)
・警察による介入が唯一の直接的対処。
・絶対に自分からは対面に応じない。
・逃げる。とにかく逃げる(できれば引っ越す)。
―――――――――――――――――――――――――――

 「リスク低」の段階には、他人を介入させずカフェやファミレスなどで話すとしているが、なぜ他人を介入させてはいけないのだろうか。

「別れ話の段階というのは、他人を介入させない方がいい。例えば、友人に相談したり一緒に連れていったりすることもあるかもしれない。だが、ストーカー気質のある場合は特に、相手の考えは『なんで自分たちの話なのに、全然関係ない人を入れるんだ』と、ネガティブな方向に盛り上がってしまう」

 一方で、「リスク中」になると、対応を当事者間のみに留まらせず、相談していくことが望ましい。今度は、他人、特に専門家に頼り自分1人で解決しないように対応する必要があるようだ。

「相談事例を見ていると、(相談が)やはり遅い。『あまり大ごとにしたくない』という心理は当然多くの方にあるが、もう少し早く相談してくれれば、加害者が心理的に盛り上がらずに済んだ可能性がかなり感じられる事例が多い。当事者同士の場合、こじれ始めると2者間で収めるのは極めて困難」

 さらに、「リスク高」になると、自分の身に直接的な危険が及ぶ可能性が非常に高くなるため、藤井氏は、逃げることを早い段階で考えるよう推奨している。

「残念ながら現行の法律や、それに基づく警察の対応からすると、ケースによって本質的な解決のためには‘‘逃げるしかない’’という状況。被害者は、『自分は悪くないのに、なんで逃げなくてはいけないんだ』と思う人が多いが、やはり物理的な距離を置くというのが、解決の糸口と感じる」

(『ABEMAヒルズ』より)

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