子育て世代の声に耳を傾けるとして、岸田総理が掲げた「次元の異なる少子化対策」。その最初の地として選んだのが、福井県だ。
実は福井県は日本有数の“幸福度が高い県”。一般財団法人・日本総合研究所が発表した「全47都道府県幸福度ランキング2022年版」では、5回連続となる総合1位を獲得している。また、子育て支援も充実していて、分野別を見ても「教育」と「仕事」で全国1位。“三世代同居”や近い場所に親が住んでいることも多く、働く女性の割合や共働き率も軒並み高い数値となっている。
しかし、一方では“女性の犠牲”を指摘する声も…。本当に福井県の人たちは幸せなのだろうか。『ABEMAヒルズ』MCを務める徳永有美アナウンサーが、福井県出身で慶応大学特任准教授などを務めるプロデューサーの若新雄純氏に話を聞いた。
■若新氏「女性中心社会に変えれば福井の幸福は“本物”になる」
――女性の忍耐あってこその幸福度ランキングでは話が違うのでは?
福井は「福」にかけてずっと幸福推しを進めている。だが、5年ほど前から、福井の子育ての手厚い支援は“嫁いできた女性の犠牲”で成り立っているのではないかという議論が生まれ始めた。
福井の幸福度にもつながる「持ち家率が高い」「子どもを預ける両親が近くにいる」という話だが、これは、一部の市街地を除き“男性が代々継いでいる家に女性が嫁いでくる”かたちを多く残しているからだ。最近では、三世代が同じ敷地内に2つの家を建てて暮らす家庭も増えていて、子どもたちにしてみれば、学校が終わった後も祖父母の家に帰れば面倒を見てもらえる。ほとんどの女性はすぐに職場復帰できて、専業主婦をしていると、『医者の嫁か』みたいな嫌味を言われる。
――共働き率も全国1位ですね。
元々、家内手工業のような会社や個人商店も多くある地域で、嫁いだ夫の店に立ったり、工場で事務員をする方も多い。そうして家と職場が一体になっていることで、子育てに関してすべて姑のお世話になってしまうことで、嫁側は全然頭が上がらない。
姑側にしても、同じことをしてもらってきたから、近くに住んで孫の面倒や嫁を共働きに送り出してやるのは当然のこと。さらに、共働きを続けてきたことで世帯収入も自然と増加しているので、「嫁を迎える以上は家くらい用意しなきゃいけない」という考えも根強く、結婚前に家を用意してあげるということも多い。嫁にしてみても家計には余裕ができるものの、夫の土地と家に“嫁”としてコミットしないといけないということだ。
――幸福度ランキングは子どもや男性にとっての幸福という意味?
幸福度ランキングの質問に「女性として、嫁として幸せですか?」みたいな項目は無いと思う。福井県だけではなく全国の調査で、「子どもを祖父母に預けておける」「世帯収入も多い」「家も広い」という項目で手厚く思えるだろう。だが実際は、“嫁”の立場から抜け出せなくなった女性の我慢が福井の幸福を支えてきた。
――福井の女性が自分の幸せを感じるにはどうすれば?
これまでは子どもたちが健やかに育つ環境を大切にしようという空気感を守ってきたが、インターネットの発展もあっていろんな価値観に触れるようになり、女性自身の人生も大切にしようとなってきた。「祖父母が子どもを育ててくれる」「土地が余っている」「女性が働ける文化がある」ことなどは福井の良いところだ。ただ、嫁姑の問題はテクノロジーでは解決できないし、それに耐えろというのはナンセンスだ。
逆に、女性側の家や近くで家族をつくりうまくいっているケースが増えている。男性中心社会だからこそ、「ムコさん」はやたら大切にされる。なので、個人的には福井は“マスオさんモデル”を推進するべきだと思っている。戸籍上の婿入りはしなくてもいいが、夫が妻側の義父母の暮らす家に住めば妻は両親に頼りやすいし、嫁姑の苦労もしなくて済む。これまでの関係を逆転させて、男性中心社会から女性中心社会に変えれば福井の幸福は“本物”になると思う。岸田総理には是非、福井の幸福を忍耐によって支えてきた女性たちの話を聞いていただきたい。
(『ABEMAヒルズ』より)
■Pick Up
・「ABEMA NEWSチャンネル」がアジアで評価された理由
・ネットニュース界で話題「ABEMA NEWSチャンネル」番組制作の裏側