先月、不動産経済研究所が首都圏の新築マンションの平均価格について、バブル期を超える6288万円だったと発表した。2年連続で最高値を更新し、高騰し続ける価格にTwitterでは「高すぎ」「手が出せない」「わざわざ都内でマンション買う必要ない」「持ち家って引っ越せないしリスクもある」などの声があがっている。
【映像】総額7億円…! 中国人オーナーの所有物件例(画像あり)
一方で、ここ数年、中国人投資家が都内のマンションを爆買いしているとも言われる。なぜ価格高騰と爆買いが共存するのだろうか?ニュース番組「ABEMA Prime」では、専門家を招き、実情を語ってもらった。
戸建てと比較してもマンション価格が高騰していることがわかる。この違いはどう考えたらいいのか。ドラマ監修なども手掛ける、個人向けの不動産コンサル会社「さくら事務所」創業者で会長の長嶋修氏はこう話す。
「マンションは立地がいいからだ。駅前・駅近、大規模、タワーなど、郊外でも利便性の高い物件が値上がっている。一方で、駅前の一戸建ては物件数が少ない。都内でも利便性が低い物件はこの数年でむしろ下がっている」
また、“バブル期超え”の表現について「絶対額だけで比べても意味がない」という。
「今は固定金利でも1%台の後半という圧倒的な低金利だ。実際には7割の人が変動金利で組むが、これは0.3から0.4%。だから、1億円借りたとしても毎月の支払いが25万円くらいだ。90年のバブル期は住宅ローン金利が7%を超えていた。7%の金利で1億円借りると、毎月の支払いは60万円を超えてしまう」
新型コロナの流行によって、何か変わったことはあるか。
「リモートワーク、在宅勤務が進んで、多くの人が住まいを見直した。『賃貸は手狭だ』と購入意欲が旺盛になって、バブル前とは言わないが、ものすごく需要があった。新築マンションは用地があまりにも少ない。20年前は首都圏だけで9万戸作っていたが、去年は3万戸くらい。ものすごく数が減った。新築がないから、中古マンション市場もものすごく上がった」
中国人投資家にとって、東京のマンションは何が魅力的なのだろうか。
「北京や上海と比べて、東京の不動産価格はものすごく安い。私たち日本人から見ると、この5年〜10年くらいずっと不動産価格が上がっているように感じるが、他の国はもっと上がっている」
中国人の投資事業に精通している、李天琦氏(シーラテクノロジーズ執行役員)も「海外の投資家から見たら、日本の金利はものすごく安い」と話す。
「不動産に投資しても、金利との差額がまるまる利益になる。イギリスや香港で同じように買っても出ていくお金のほうが多くなる。投資家からすると、日本は金利が安いので、世界的な投資マネーが集中している状況だ。僕自身も中国人で、不動産投資をここずっとやっているが、先に買い付けを入れても、後から来た別の中国人が現金で買っちゃうみたいなことが毎月のように起きる。すごくやりづらい」
日本は地震などの災害が多い国といわれるが、リスクは感じていないのか。
「投資家は、リスクとリターンが最終的にどこに落ち着くかしか見ない。日本は中国と違って、不動産の所有権を持てる。中国は不動産投資をしても、50年〜70年したら土地を国に返還しなきゃいけない。総合的に見て、震災リスクを差し置いても、日本はものすごく投資価値のある場所だ」
長期保有で買った物件は「全て賃貸に出している」と話す李氏。一部の投資家はすでに民泊需要に気づいているという。
「最近は観光業が復活してきた。浅草で作っている一棟も、ホテルとして貸し出す予定だ。コロナ禍では、例えば1室4000円でもお客さんが入らなかった部屋が、今は8000円にしても全部満室になっている。規制が緩和されて、中国からお客さんが来たらもっと値上がるだろう。僕の肌感だが、中国人の7割〜8割は投資用で買っていると思う。例えば新築のタワーマンションを買って、一時は自分で住むとしても、将来的に利益が出るかどうかを重んじて買っている印象だ」
長嶋氏は「以前はディベロッパーの中で外国人に売る比率は『だいたい何%にしておこう』という紳士協定的があったが、内実はもうよく分からなくなっている」と明かす。
「まだ購入者は圧倒的に日本人が多い。昨今の状況だと円安だから、中国はもちろん、欧米系のお金も入っている。その中でどうやってバランスをとるのか。法律で別に決まっているわけじゃない」
慶応大学特任准教授の若新雄純氏は「年収は変わらないまま、海外の金持ちにしか買えないような、東京のいいマンションだけが値上がっている」と指摘する。
「普通のサラリーマンが手に届くようなマンションは実はそんなに値上がっていない。中古になるとすぐ値段は下がる。東京都の一等地のマンションも、日本で頑張った人が成功すればみんな手に入るものであってほしかった。もう日本人には手が届かなくなり、コロナ禍が明けて海外旅行に行こうとしたら、海外の物価が高すぎる。日本の物価が安いままだったということに僕らは気づいてしまった」
(「ABEMA Prime」より)
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