【WBC・準々決勝ラウンド】日本代表-イタリア(3月16日/東京ドーム)
身長173センチとは思えない大きなスイングから放たれた打球は、素直に美しい放物線を描いて、ライトスタンドに消えていった。レッドソックス・吉田正尚外野手は、今大会初めて4番に座ったが、7回にライトへダメ押しの大会1号ソロ。鍛え上げられた体と、無駄なくパワーを放出する技術の結晶が、またも芸術的なビッグアーチを生んだ。
7回無死、カウント2-2から真ん中に入ってきたスライダー。吉田は気持ちよく振り抜いた。日本の野球ファンなら、何度も見てきた美麗なスイング。一昔前まで、小柄な選手はしっかりミートし、内野の頭を越すライナーを打てと言われていたところだが、吉田のスイングは豪快そのもの。かつスピード、コース、球種どれにでも対応できる技術で、メジャー1年目から大型契約を勝ち取った。その片鱗が、この日の一発だ。
なかなか調子が上がらないヤクルト・村上宗隆内野手に代わり、4番に入った吉田。相手投手陣から厳しい攻めにあい、この試合でも死球を受けてヒヤリとさせたが、何事もなさそうに一塁に向かうと、その後の打席でホームラン。なんとも頼りになる男だ。
チームは投打ががっちりと噛み合いイタリアに快勝。いよいよ3大会ぶりの優勝を目指して、アメリカに乗り込む。ここから先は出場できる選手は全て使い切るような総力戦が待っている。しびれる戦いの中で、メジャーの開幕前に美しい一発を放てば“吉田株”は急上昇する。
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