【WBC・準決勝】日本代表6－5メキシコ（3月20日・日本時間21日／ローンデポ・パーク）
普段はクールな男が、興奮を抑えきれなかった。「3番・DH」でスタメン出場したエンゼルス・大谷翔平投手が5打席で4打数2安打1四球と3度の出塁。特に4-5と1点を追う9回には先頭打者としてセンターにツーベースを放つと、自らヘルメットを飛ばして激走。二塁上でチームメイトを鼓舞すると、5番のヤクルト・村上宗隆内野手にサヨナラ2点タイムリーが飛び出した。歓喜の輪の中心で抱き合いながら飛び跳ねた大谷は、試合後のインタビューでも「最後まで諦めない気持ちでああいう形になったので、みんな素晴らしかったと思います」と興奮気味に話した。
ずっとこういうしびれるような戦いがしたかった。エンゼルスでは投打二刀流としてメジャーの歴史に残る大活躍をしてきた大谷だが、どうしても足りなかったのが優勝を目指すような戦い。常にチームを最優先に考える選手だけに、いくら投げてもいくら打っても、チームの成績が上がらないと、モチベーションの維持も難しかった。WBC大会前の会見で、大谷は「勝つことだけを目指して」と、優勝の2文字を意識した。幼いころに見た侍ジャパンの勇姿。その中で自分が仲間と戦い歓喜することを夢見た中、自分が作ったチャンスに、不振だった仲間がサヨナラ打。こんなにうれしいことはない。
試合後のインタビューで大谷は「本当に簡単に勝てないとわかっていましたけど、まさかこんなゲームになるとは思っていなかった。ムネ（村上宗隆）がきつかったと思いますけど、最後にいいバッティングを見せてくれました。本当に苦しかったと思うんですけど、人一倍バットも振っていましたし、必ず打ってくれるのは、吉田さんもそうですが、僕が出れば1点取れると思っていました」と自分の打撃以上に、村上の一打を称えた。残るは最強アメリカとの決勝。この日以上の喜びは、優勝でしか味わえない。
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