【WBC・決勝】日本代表3-2アメリカ(3月21日・日本時間22日/ローンデポ・パーク)

 世界的なスター選手となったエンゼルス・大谷翔平投手でも、これほどまでに感情を爆発させた瞬間はなかったことだろう。1点差の9回、リリーフで登板し2死からチームメイトでもあるトラウトと対戦。追い込んでから外角に鋭いスライダーで空振り三振を奪うと、グラブを投げ、そして帽子を投げ、マウンド上で思い切り雄叫びをあげた。試合中は、努めて冷静にしようという意図が見えた大谷。溜め込んでいた強い思いを、優勝決定とともに全て解放した瞬間だった。

 前日の準決勝、メキシコに追い詰められた展開の中、大谷は打者として出塁する度にベンチに向かって大きく手を挙げ、また声を出して仲間を鼓舞した。ところがこの日は「3番・DH」でスタメン出場するものの、感情を大きく出す様子もなく、ベンチでもこれまでのように仲間に大きな声をかけるわけでもなく、落ち着いた雰囲気。おそらく9回に待っているだろうリリーフ登板に備えて、感情の起伏、アドレナリンの量を整えていたことだろう。

 7回の第4打席、内野安打の際には全力疾走に大きく手を広げて「セーフ!」のゼスチャーをしたのは、やはり選手としての本能か、それとも試合が終盤に入ったからか。抑え込んでいたものが、徐々に溢れていた。そして9回、優勝がかかるマウンドに登板すると先頭打者に四球を与えたものの、次の打者を併殺打に打ち取りガッツポーズ。そして最後はチームメイト・トラウトとの、MVP夢対決。「最高の形で迎えることができて、最高の結果になってよかったです」とスライダーで空振り三振に仕留めると、内に秘める必要がなくなった感情が大きなアクションとして出まくった。

 前回優勝した14年前、大谷はまだ中学生。決勝ではレジェンド・イチローが勝ち越し打を放ち、マウンドには一緒に戦ったパドレス・ダルビッシュ有がいた。優勝を決めたのは、同じ外角へ鋭く曲がるスライダー。当時の夢をまた1つ実現した瞬間だ。「本当に夢見てたところなので、本当にうれしいです」。うまくなりたい、勝ちたい。ずっとそれだけを考えてきた大谷は、これからも高みを目指して打ち、そして投げる。
(C)Getty Images

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