久保翔子女流2級「“父”とは何を話していいか…(笑)」夢の道歩き出した17歳の現在地
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 「初めてだから、送ってきました。大丈夫かな…」。声の主は、新人女流棋士の父。棋王3期、王将4期を獲得した振り飛車党の第一人者、久保利明九段(47)だ。“捌きのアーティスト”の異名を持ち、数々のタイトル戦を戦ってきたトップ棋士も、この時ばかりは父の顔に。今日の主役は、2022年10月にプロデビューを果たした久保翔子女流2級。夢の道を歩き出したばかりの17歳の“今”を聞いた。

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 制服姿で前髪を気にする姿は、“いまどきの高校生”とは一線を画すようなあどけなさを残している。父が棋士で娘が女流棋士の親子プロは、塚田泰明九段(57)と恵梨花女流初段(24)ら次ぐ4組目。久保女流2級は父の影響で4歳から自然と将棋を始め、離れた時期もありつつも自分のペースで勉強を続けてきた。

 2022年9月、棋士・女流棋士の養成機関「研修会」で直近の成績12勝4敗と規定の成績を修め、C1からB2に昇級。その時点で女流棋士となる資格を得て、翌10月にプロ入りを果たした。“久保九段の娘”という必要以上の注目をものともせず、12月のデビュー戦を白星で飾り、「緊張して頭が真っ白になってしまって内容的には反省すべきところも多かったですが、結果が良かったのと女流棋士になったんだなという実感が湧いた一局でした」とプロ初勝利を素直に喜んだ。

 “父で師匠”という特殊な関係性に加えて、世界がぐんと広がる多感な10代の時期。「普段何を話していいか、正直わからないです(笑)」。この日の父・久保九段も、娘を仕事を送り届ける“任務”が済むと「では」とだけ言葉を残し、そそくさと帰路へついた。久保女流2級は照れた表情で首をかしげたが、『尊敬する棋士』には“久保利明九段”の名を挙げる。「あまり将棋を指す機会もないですが、普段からとても優しいです」と話すと笑顔がこぼれた。

 父と同じ振り飛車党で、「どちらかというと受けが得意。角交換振り飛車や四間飛車が好きです」。現在は大阪府内の高校にも通い、女流棋士の“二刀流”をこなす多忙な生活を送っている。10代の女流棋士が増えたとはいえ、その苦楽を知るのはやはり一握りの限られた者だけだ。「対局で学校を休むと授業の内容がわからなくなって置いて行かれるので、そこは大変だなと思います」。それでも、「女流棋士ということで、クラスメイトとの話題が増えることがあります」と喜びの大きさに胸を張る。優しい瞳の奥に、女流棋士のプライドが垣間見れた瞬間だった。

 あどけなさと大人びた表情、どちらものぞかせる魅力的なキャラクターの久保女流2級だが、高校生らしい一面も。 

 「好きな芸能人はNiziUのRIOさん。ライブに行ったことがあって、ダンスがすごく上手なのと、笑った時の顔で好きになりました。自分でダンスすることは…できないです(笑)」「(対局や公務の)遠征の時には、必ずヘアアイロンが必需品です。寝癖がひどいので、いつも持っています」

 言葉は多くなくとも、興味のベクトルは各方面へ張り巡らされている。「将来的な趣味の候補」としては、「城巡り」を挙げた。「まだ趣味と言えるほどではないですが、母が城好きなのがきっかけです。身近なのは大阪城ですが、行ってみたいのは熊本城。熊本は修学旅行で行ったんですけど(熊本地震の)改修工事中だったので、完成してからまた行ってみたいです」。熊本城は2009年4月に行われた第67期名人戦七番勝負第2局の舞台となるなど、各地の城は将棋のタイトル戦とも縁が深い場所。公式戦での活躍はもちろん、“城マニア女流棋士”として注目を集める日も近いかもしれない。

 12月のデビューから、戦績は1勝3敗。選んだ道の厳しさは、父の背中から学んでいる。「自分の実力はまだまだ。将来的にタイトルを目指せるくらい強くなれるように、今から毎日頑張っていきたい」。夢の道を歩き出した17歳・久保女流2級の視線は常に上を向いている。
ABEMA/将棋チャンネルより)

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