FIFA ワールドカップ カタール 2022で一つの区切りを迎えた日本代表は、3月にウルグアイ代表とコロンビア代表と対戦した。結果はそれぞれ1-1の引き分けと1-2の敗戦に終わり、勝利を飾ることはできなかったが、新戦術を試すなど、内容面ではいくつか成果が見られた。
【映像】三笘薫 開始3分に高い打点のヘディングでゴールを決める!
特に、代表チーム内に焦点を当てると、熾烈なポジション争いが繰り広げられたのが2列目だ。今回は「左サイド」「トップ下」「右サイド」の3つに分けて各選手を評価していく。
最大の武器となり得る「左サイド」
三笘薫 ★★★★☆
左サイドで先発したウルグアイ戦では、チームの構造的にも右サイドの堂安律と同様に低い位置のプレーが多く、ペナルティーエリアの中で仕掛ける場面などは影を潜めた。とは言え、この難しい展開でも自陣からドリブルで運び、攻撃の起点となるなど持ち味を発揮していた。
続くコロンビア戦では3分にヘディングで先制点を奪うことに成功。この試合も縦に仕掛けるシーンはそれほど多くはなかったものの、決定的なパスでのチャンスメイクや守備での奮闘など、クオリティの高さを存分に示したと言える。
中村敬斗 採点なし
今回、日本代表に初招集された中村敬斗だが、出場機会は89分から出場したウルグアイ戦のみとアピールするための時間は十分に与えられなかった。絶対的な存在である三笘と、コロンビア戦の後半のように右サイドの伊東純也が左サイドで出場することもあるため、今後も出場機会を得ることには苦戦しそうだが、森保監督には中村を試してほしいものだ。
群雄割拠“当確”不在の「トップ下」
鎌田大地 ★★☆☆☆
鎌田は攻撃において違いを生み出せず、守備に追われる印象が残った。ウルグアイ戦ではトップ下で先発したが、両SBを初め多くの選手が中央にポジションを取ったこともあり、鎌田がうまくボールを受けられるスペースがなく、前を向いて違いを作れる場面はほぼなかった。
西村拓真 ★★★☆☆
途中交代で出場したウルグアイ戦では直後のファーストタッチでゴール。上田綺世のランにより空いたスペースに飛び込んで得点を奪い、最高のアピールに成功した。
先発したコロンビア戦では前からの積極的な守備を見せ、これには元日本代表DF槙野智章氏も「こういう選手が仲間にいるのは相当に大きい」と賞賛していた。しかし、フリーの場面で枠外へ外すシーンなどもあり、代表定着に向けてさらなる確実性が求められるだろう。
久保建英 ★★☆☆☆
ウルグアイ戦を欠場し、コロンビア戦で途中出場したものの、コンディションが良くないのか、イージーなボールロストが目立ち、プレーの関与も少なかった。しかし、試合終盤にはボランチの遠藤航から縦パスをもらうシーンなどが増えたことで、ボールに関与する機会も多くなった。一方で、ラストパスの精度に欠き、チャンスを作り出すことはできなかった。
「右サイド」は2人のWGの“一騎打ち”
堂安律 ★★☆☆☆
先発したウルグアイ戦では、SBを内側に置く試みが行われたことで、普段よりも低い位置で受ける回数が多かった。また堂安律は自らの大外にSBがオーバーラップすることで中や外への選択肢が増える選手であり、彼がプレーしにくい環境だったことを考慮しなければならない。これは堂安の責任というより、スタメンや戦術を考えたスタッフ陣の嚙み合わせの問題であり、ウルグアイ戦のパフォーマンスから序列を下げるのは酷な話だろう。
伊東純也 ★★★★★
クラブでも好調の伊東は代表戦でも安定した活躍を見せた。途中交代で出場したウルグアイ戦では縦への突破や上田綺世との連係から、一時はPKの判定となる動きで早速、違いを見せつけた。他にも相手を誘い出した上で裏へ抜け出してパスを受け、見事なクロスから西村のアシストを演出するなど、攻撃においての存在感は圧巻だった。
先発したコロンビア戦も、球際を制して相手のイエローカードを誘発したり、左サイドにポジションを移した後も相手陣地でボールを奪ってカウンターの起点になったりと、この試合においても目立った活躍を見せた。
今回の代表戦でアピールに成功した2列目の選手は三笘、伊東、西村の3人だろう。特にスピードのある両WGは今後の日本代表の武器となる可能性が極めて高い。まずは来冬のアジアカップを見据えてチームを固めていくことが予想されるが、そのなかで今回の代表戦でアピールしきれなかった鎌田や久保、堂安らがポジション争いを制することができるのかに注目だ。
(C)浦正弘(ABEMA/キリンチャレンジカップ2023)