大きな戦果を挙げて幕を閉じたFIFAワールドカップカタール2022以降、森保一監督が続投となり最初のキリンチャレンジカップ2023は、2試合のなかで様々な実験が行われた。成功と失敗、明暗が分かれた選手もいるなか、板倉滉は自身の価値を証明してみせた。
【映像】板倉滉、世代交代した日本代表DF陣の更なる進化を目指す
板倉はフィールドプレーヤーで唯一、ウルグアイ戦、コロンビア戦の両方でCBとしてフル出場し、2試合を通して大きなミスもなく、堅実な守備を披露し、得意とするビルドアップも安定したプレーを見せた。
初戦のウルグアイ戦、26歳にしてDFラインの中で最年長となった板倉は、菅原由勢、瀬古歩夢という、代表デビューしたばかりの選手が並ぶ最終ラインをけん引した。さらにコロンビア戦ではゲームキャプテンも任された。
元々、CBのレギュラーである冨安健洋に負傷が多いということもあり、確固たるDFリーダーになることが板倉には期待されている。
メンヘングラートバッハの不安定な守備を立て直す
それはクラブでも同様だ。
板倉の所属するメンヘングラートバッハは古豪として名が知られているドイツの名門で、現在、ブンデスリーガで10位につけている。チームはCBからしっかりとボールをつなぐ攻撃的なサッカーを展開しており、板倉も持ち前のビルドアップ能力の高さを買われ、貴重な戦力としてスタメンに定着している。
攻撃的で見応えあるサッカーを披露しているメンヘングラートバッハだが、一方で安定感の薄さも露呈している。2月においては格下のヘルタに1-4で大敗したかと思えば、国内の絶対的王者であるバイエルンに3-2で競り勝ったりもするのだ。そして王者に勝った勢いのまま波に乗るかと思いきや、その後の試合は苦しんでいる。
不安定さの原因は失点数の多さだ。FIFAワールドカップカタール2022による中断明け以降の10試合で20失点を喫しており、クリーンシートもわずかに2つ。板倉も守備陣の不調に引っ張られるようにして、失点に関与することも少なくない。
このチームにおいて、コーチング面などでチーム全体を統率することが、チームの勝利につながる上に、板倉自身の株を上げることにもつながるだろう。
吉田麻也の役割を引き継ぐ
そもそも、これまでの日本代表のDFラインは、シャルケ所属のDF吉田麻也に統率の部分で頼ってきた。本人はまだ代表引退を宣言しているわけではないものの、34歳という年齢を考えるとそろそろ世代交代の時期である。
外から見るだけではわかりづらいが、彼がいるのといないのとでは、コーチングの量や質が変化することは間違いない。日本代表の守備ブロックがさらなる成長を目指すのであれば、板倉は彼と同レベル以上のリーダーになる必要があるだろう。
コロンビア代表戦後のインタビューで板倉は「ウルグアイとコロンビアという素晴らしい相手とできて、球際の激しさを感じた。自チームに戻って、個人のレベルアップにつなげたいと思います」と語った。言葉通り、ドイツの地でさらなる飛躍に期待したいところだ。
(ABEMA/ブンデスリーガ)
(C)浦正弘