「おじさんはお呼びじゃないでしょ」「ちゃらんぽらんに割り切った」“脱力系”行方尚史九段が本大会切符「夢にも思わなかった」/将棋・ABEMAトーナメント
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 ほどよく脱力したことが、本人もびっくりの結果につながった。将棋界の早指し団体戦「ABEMAトーナメント2023」の出場権を争うエントリートーナメントの模様が4月8日に放送され、関東Bブロックからは行方尚史九段(49)が勝ち上がり、エントリーチーム入りを決めた。第3回大会ではチーム木村のメンバーとして参戦したが、4戦全敗といいところなし。「スタジオの行き方を忘れるくらい。おじさんはお呼びじゃないでしょうし、のびのびやりたいです」と、エントリートーナメントにも力を抜いて参加したところ、あれよあれよと勝ち上がり出場権を獲得。「夢にも思わなかった」と、3大会ぶりの出場を決めた。

【映像】3大会ぶりに本大会出場を決めた行方尚史九段

 持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算の超早指し・フィッシャールール。行方九段は第3回大会で4連敗に終わったことで苦手意識も芽生えていたのか、その後もいいところがなかった。ところが今回のエントリートーナメントでは「のびのびやりたいです」の言葉通り、らしさ全開で勝ち上がった。準決勝では長年研究会で時間を共にしている青嶋未来六段(28)と対戦。お互い手の内を知り尽くしている間柄だが、先手番から居飛車穴熊を採用すると、三間飛車・ミレニアムを採用した青嶋六段を序盤からリード。中盤から9七の地点に歩を打ち込まれ、渡す駒次第ではすぐに詰みが生じてしまう冷や汗ものの展開が続いたが、しっかりと見切って111手で勝利。決勝進出を決めた。

 決勝では千葉幸生七段(44)を相手に相掛かりの一局。盤面左側での押し合いを経由して、どちらが主導権を握るか難しい攻防に見られたが、ここで抜け出したのが行方九段。終盤には▲2三飛成と鮮やかに斬り込んで勝負を決定づけると、最後まで緩みなく勝ち切った。

 まるで勝てなかったフィッシャールールで、本人が一番驚くトーナメント突破。対局後も「気がつけばここにいる感じで不思議な気持ちです」と、きょとんとしていた。とはいえ、順位戦ではA級を6期務め、名人挑戦経験もあり、早指し戦では朝日杯将棋オープン戦の第1回優勝者でもある。コツさえ掴めば、まだまだ勢いのある若手とも堂々に渡り合える。「お呼びじゃない」どころか自分で勝ち取った本大会への切符。苦手意識がなくなった今、怖いベテランが目を覚ました。

◆ABEMAトーナメント2023 第1、2回が個人戦、第3回から団体戦になり、今回が6回目の開催。ドラフト会議にリーダー棋士14人が参加し、2人ずつを指名、3人1組のチームを作る。残り1チームは指名漏れした棋士が3つに分かれたトーナメントを実施し、勝ち抜いた3人が「エントリーチーム」として参加、全15チームで行われる。予選リーグは3チームずつ5リーグに分かれ、上位2チームが本戦トーナメントに進出する。試合は全て5本先取の9本勝負で行われ、対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで行われる。優勝賞金は1000万円。
ABEMA/将棋チャンネルより)

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