6日に沖縄県宮古島周辺の空域で消息を絶った陸上自衛隊のヘリコプター。周辺海域ではこれまでに燃料タンクの一部とみられる漂流物や隊員のヘルメットなどが発見されているが、乗っていた10人の行方は未だ掴めぬままだ。
防衛省によると、視界は当時良好だったという。レーダーから消えるわずか2分前には空港の管制官と交信しており、緊急性を疑わせる内容ではなかったということだ。先月末には機体の特別点検も行っていて、異常は確認されていなかった。
そんな中、前日に中国の空母「山東」が沖縄の南海域を航行していたと防衛省が発表した。台湾周辺での軍事演習に参加するためで、山東が太平洋を航行するのは初めて。また、尖閣諸島周辺ではたびたび中国船による領海侵入が報告されていたこともあり、ネットでは“中国による撃墜説”が飛び交うこととなった。
こうした憶測をTwitterでバッサリと斬ったのが、元航空幕僚長の田母神俊雄氏。11日の『ABEMA Prime』はさらに詳しく話を聞いた。
今回消息を絶ったのは「UH-60JA」、“ブラックホーク”と呼ばれる高性能のヘリ。田母神氏は「SOSを発信する余裕がない状況に追い込まれたのではないか」と推測する。
「オートローテーションといって、ヘリはエンジンが止まっても浮力を得ながら降りることができる。ただ、後部の補助ローターが飛んだとなると、機体には相当な振動が発生するのと回転し出してしまうのとで、パイロットは手元にある交信用のスイッチに触れなかったのではないか。発見された燃料タンクは、おそらく海面に当たって破壊されたように思う」
中国撃墜説について、「数名の方から撃墜されたのではないかという質問を頂いたがそれは無いと思う」とツイートしている田母神氏。ミサイルやドローンによる攻撃、妨害電波、工作員による破壊工作など、様々な憶測を次のように一蹴する。
「ドローンが接近する場合、自ら電波を出すので必ず航空自衛隊のレーダーで探知される。電磁波も、出せば“私はここにいる”と日本側に知らせるようなものだから、そんなことはしない。工作員が何かを仕掛けられるかというと、師団長が乗ることからヘリは入念に点検されるし、ダブルチェックをするのでその可能性もないと思う。これらを考えると、機体に異常が生じた事故だったのではないか」
点検をしていた上でも防げなかった不慮の事故なのか。プロデューサー・慶応義塾大学特任准教授の若新雄純氏は「ネットの人たちが外敵のせいにしたいのも、『今さら不備なんてことはないだろう』『攻撃でもされない限り人の命がかかった乗り物が落ちるわけない』ときっと思っているから。“いつかは落ちる可能性がある”というものに頼るのは不思議ではないか」と投げかける。
これに田母神氏は「交通事故で死ぬ確率よりも飛行機事故で死ぬ確率のほうが低いと比較されたりもするが、そもそも“完全な安全”というものはないわけだ。どれだけ努力しても起きてしまう。今回、陸上自衛隊がサボっていたとか、点検しなかったということではないと思う」と答えた。
捜索は困難を極めており、酒井海上幕僚長は「海底地形がサンゴにより複雑。機体なのかサンゴの岩礁か見分けがつかない」と明らかにしている。
田母神氏は「非常に凸凹が激しい海域。機体が壊れていれば乗員がそれぞれ見つかっていくと思うが、おそらく壊れていないのだろう。振動が生じてシートベルトを外す暇もなかったという状況で、そのまま沈んでしまった可能性はある。本当に早く見つかってほしい」とした。(『ABEMA Prime』より)
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