3月末、内閣府は全国の「ひきこもり」の実態に関する驚きのデータを発表した。現在、全国では推計146万人(15~64歳)の人がひきこもり状態にあり、「中高年(40~64歳)においては男性よりも女性の方が多い」のだという。
【映像】子どもが大学へ→「あれ?私ひきこもりかも」というケースも
2018年の調査では23.4%と少数派だった中高年女性のひきこもりが52.3%に倍増しているのだ。家事や子育て、介護などを担ってきた結果、自覚がないまま社会から隔てられたケースも多いというが、実情はどうなのか。
ニュース番組『ABEMA Prime』ではこれまで見過ごされてきた中高年女性のひきこもり問題を当事者と考えた。
元夫のモラハラなどで8年間ひきこもりの状態にある50代女性の佐藤さん。離婚後、子どもは元夫と生活し連絡が取れずにいる。
「精神的苦痛で離婚後も働けず、通院するようになってしまった。特別な用事と買い物以外はずっと家にいる」(佐藤さん)
現在佐藤さんは生活保護で一人暮らし、実家とも疎遠だという。
そもそも「広義のひきこもり」は、(1)自室からほとんど出ない、(2)自室からは出るが家からは出ない、(3)近所のコンビニなどには出かける、(4)趣味の用事のときだけ外出する、のいずれかの状態が6カ月以上継続し、かつ精神的・身体的疾患や妊娠などの事情がない人と定義され、その線引きは曖昧だ。
「KHJ全国ひきこもり家族会連合会」共同代表で、22年間引きこもった息子と暮らす山本洋見氏は「精神疾患のある人はひきこもりではない、という定義には違和感がある。ひきこもっている人の約3分の1には精神疾患が起こるが、それは相談する相手もなく一人苦しんだ結果だからだ」と疑問を呈する。
その上で「『うちの奥さんは専業主婦で、趣味以外で外出しないから』という話がひきこもりにあたるかというと、そうではないと思う。精神的に辛くて外出できない。他のことでは出られない。本人が社会と隔絶されてしまっている、隔絶している、社会的なつながりが一つもなくなっていると感じて苦しんでいるかが、実際の線引きだ」とした。
これにプロデューサー・慶応義塾大学特任准教授の若新雄純氏は「例えば子どもが小さい頃はその世話で忙しくて、家の中で精神的不安もなく専業主婦をしていたが、子どもが大学に行ったりして出ていったと。その後も専業主婦をやっていたが、気がついたら外とのつながりもなく、自分の居場所が家の中だけになって『あれ?』とひきこもり状態になっている人がけっこういるということか?」と質問。
山本氏は「そうだ。ただ、その状態を本人が“全然苦にならない”“ああ楽しい”と満足していれば問題ないし、支援する必要もない。そうではなく、孤独感にさいなまれている場合はやはり支援が必要だ」と述べた。
「家族以外との会話がなくなっていた」――。自覚がないままに“ひきこもり予備軍”になっていく傾向が中高年女性に多いという。若新氏は「家を中心に考える日本の在り方を再考する時代が来たのだと思う」と提言する。
「つまり、家だけでは完結せず、家の外でも繋がりを持っておくのが大事だということ。今までは家族さえあれば、家に居場所さえあればその人は幸せなのではないか、あそこは一家団欒だからいいではないか、で終わらせてきた。そこに対して、社会全体で生きていくということを考える時代が来た」
佐藤さんに「頼る場所」があるかを聞くと「はっきり言えば社会とは繋がっていない。病院の行き帰りとか、買い物をするくらい。あとは、家にいるという状態がずっと続いている。このままではいけないとは思っているがなかなか行動できない」と答える。
これを受けて山本氏は「私はひきこもった息子を持っていた母親だ。“支援はいらない”と拒否し続けている人も、心の中では“誰かと繋がって自分の気持ちを聞いてもらいたい”と本当は思っているかもしれない。そんな方に手を差し伸べられる社会の受け皿を作っていくことが私たちの役割だと思う」と述べた。
(『ABEMA Prime』より)
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