岸田総理襲撃 木村容疑者の“やり遂げた表情”を心理学者が分析 「国への提訴と今回の犯行、心理は同じ」
【映像】諦観か達成感か?木村容疑者の心理に迫る

 岸田総理を襲撃した木村容疑者。拘束された際は激しく抵抗することもなく、その表情は諦観したようにも、一定の成果をあげて満足しているようにも見えた。『ABEMAヒルズ』では心理学者とともに黙秘を続ける木村容疑者の“表情の内側”に迫る。

【映像】諦観か達成感か?木村容疑者の心理に迫る

「犯行後の表情が印象的でした。抵抗なく無表情で周りを見渡しながら拘束され、その後は黙秘を貫いている。おそらく継続して抱かれていた虚無感の一方で、計画したことを一定程度やり遂げたという表情に見えた。妥協の産物としての成功体験を得たのかもしれない」

 そう話すのは、心理学が専門で臨床心理士・公認心理師でもある明星大学心理学部教授 藤井靖氏。

 対して、株式会社 雨風太陽 代表取締役の高橋博之氏は「僕自身が30歳で岩手の県議会で立候補した背景にも『世襲政治』への不満があった。今、彼は24歳で1年待てば立候補できたのに…。裁判まで起こす情熱があるのに、なぜ負けたからといって『次は選挙に』とならなかったのか。テロに至るには飛躍があるように感じる」と疑問を口にする。

 これを受けて藤井氏は「現在出ている情報をもとに考えると、裁判を起こす行為と今回の犯行は、法に触れるか触れないかの違いはあるにせよ、背景の心理は共通している可能性がある」と話し、「二分思考」「二重化」「二極化」という3つのキーワードで木村容疑者の心理に迫った。

 まずは、「二分思考」について。

「過去の重大犯罪やテロ行為事例・容疑者の心理を分析すると認知の歪みの一つである二分思考が見られる。正義と悪、正解と誤り、白と黒のようにはっきり分けているのだ。今回の例でいうと自分は正義、悪は政治、政治の象徴は岸田首相と考え、グレーゾーンがない状態。そういう二分化された思考が本人の中にあったとすれば裁判で悪を追及するという行為がうまくいかなった段階で、たとえ犯罪行為であったとしても悪を叩くためにこういう手段をとるんだ、という思考で動いた可能性は否定できない」(以下、全て藤井氏)

 続いて二重化。

「二重化も過去の重大犯罪に共通している。表面的な生活と内的世界との乖離があるのだ。木村容疑者に対する近所の印象は『大人しい』であり、中学時代にはいじめも受けたという報道もあるが、内面に自分の感情を抑えていたとすれば表面的には平穏な生活をおくっていたとしても『顕在化しない鬱憤』がたまり続けていたのでは。そうすると普段顕在化しない分、あるとき重大な犯罪という形で出てしまう。表面的には適応しているように見えても、本人の主観では『社会と隔絶されている』という感覚も持たれ、それが自他への破壊行動という形の自己表現・自己顕示につながることが多い」

 最後に二極化。

「安倍元総理の事件を見て、『自分もできる』と思ってしまった可能性が十分にある。事実、一部のネットには山上容疑者に対してポジティブな目を向けたり、擁護した群があった。SNSやネットでは自分が見たいものだけを見ることもできるので、そこばかりに心惹かれて自分の考えが正しいという歪んだ感覚をさらに強めてしまったかもしれない。と同時に、自分の状況を客観的に見たときに救いがないように感じられ、自分の考えを具現化するしかないと『極性化』していって犯行に至ったのではないか。容疑者の中でのネガティブケイパビリティ(あいまいさや答えの出ない状況に耐える力)が限界を迎え、極端な結論づけをした可能性がある」


(『ABEMAヒルズ』より)
 

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