将棋界の早指し団体戦「ABEMAトーナメント2023」予選Aリーグ第2試合、チーム永瀬とチーム稲葉の対戦が4月22日に放送された。第3局はタイトル5期獲得の実力者・永瀬拓矢王座(30)に、2022年度の将棋大賞・新人賞を受賞した服部慎一郎六段(23)の好カード。超早指し戦ながら、ハイレベルな将棋内容に、他の棋士からは「持ち時間5時間の将棋でも通用する」と、評価する声が飛び出した。
永瀬王座は、将棋界一とも言われる研究量と、徹底して勝負にこだわる棋風、ストイックな姿勢から「軍曹」とも呼ばれ、王座のタイトルは4連覇しているトップ棋士の一人。藤井聡太竜王(王位、叡王、棋王、王将、棋聖、20)とともに研究を重ねる間柄としても知られる存在だ。
対する服部六段は2022年度に全棋士最多となる68局を指し50勝18敗、勝率.7352と大活躍。若手の登竜門、新人王戦でも初優勝を果たすなど、今後が大きく期待されている若手棋士だ。ABEMAトーナメントでは昨年もチーム稲葉のメンバーとして参加し、見事に初優勝を果たしている。
現在3人しかいないタイトルホルダーの一人である永瀬王座と、売り出し中の服部六段の対戦は、服部六段が先手番から得意の矢倉を採用。研究豊富な永瀬王座も、仕掛けてくる相手に対して、しっかりと受け止める立ち上がりになった。中盤から激しい力と力のぶつかり合いという展開になったが、ここで頭一つ抜け出したのは永瀬王座。盤面中央での競り合いを制してペースを掴むと、一気に攻めのスピードをアップ。力強く寄せ切った。試合後、永瀬王座は「序盤から注文をつけられてこられる展開で、終始こちらとしては苦しかった」と振り返れば、服部六段は「途中から力のねじり合いになって圧倒的な力負けでした」と脱帽。お互いの力を認めるようなコメントが続いた。
この一局に感動したのは、観戦していた棋士たちだ。チーム永瀬の増田康宏七段(25)、本田奎五段(25)は声を揃えて「フィシャーじゃないよね、これ」と、早指しで指せるような内容の将棋ではないと絶賛。さらに増田七段は「(持ち時間が)5時間ぐらいの将棋でも全然通用する」と加えた。
ABEMAトーナメントでは、以前は早指し戦に向けた戦型が取られることも多かったが、年々内容もレベルアップ。中にはタイトル戦で用いられた内容のアレンジ版なども出るなど、超早指しらしからぬ濃厚な一局も生まれている。この対戦を見ず、棋譜だけで確認した人がいたら、長時間の公式戦とものだと勘違いすることがあるかもしれない。
◆ABEMAトーナメント2023 第1、2回が個人戦、第3回から団体戦になり、今回が6回目の開催。ドラフト会議にリーダー棋士14人が参加し、2人ずつを指名、3人1組のチームを作る。残り1チームは指名漏れした棋士が3つに分かれたトーナメントを実施し、勝ち抜いた3人が「エントリーチーム」として参加、全15チームで行われる。予選リーグは3チームずつ5リーグに分かれ、上位2チームが本戦トーナメントに進出する。試合は全て5本先取の9本勝負で行われ、対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで行われる。優勝賞金は1000万円。
(ABEMA/将棋チャンネルより)