将棋の第81期名人戦七番勝負第2局が4月27・28日の両日、静岡県静岡市の「浮月楼」で行われ、挑戦者の藤井聡太竜王(王位、叡王、棋王、王将、棋聖、20)が渡辺明名人(39)を87手で破り、開幕から2連勝を飾った。超難解な終盤戦で抜け出し、挟撃を決める藤井竜王の鮮やかな勝負術に、ABEMAの解説陣からは「まるで魔法のようだ」との声が上がった。
【映像】中村八段が「フライング気味?」と語った藤井竜王の勝負の一手
若き六冠保持者が、最年少名人と七冠獲得に向けて開幕ダッシュの2連勝を飾った。第2局は、藤井竜王の先手番。4連覇に向けて絶対に負けられない渡辺名人が、早々に角道を止めて雁木模様の出だしとなった。相居飛車の力戦の進行を見た先手の藤井竜王は、「後手から速攻を狙う形もあるのかなと思って持久戦にしたが、経験のない形になって、どういう駒組みにしていくか難しかった」と語った。
長く難解な序盤戦が繰り広げられ、1日目の進行はスローペースに。互いに端を攻め合い、絶妙な間合いが保たれたまま封じ手の時刻を迎えた。藤井竜王が40分を投入した一手は、候補手の中でも最も激しい変化を含む香上がりの一着。しかし、「1筋からの攻めを見せてどうかと思っていたが、香車も上ずってしまい、こちらの攻め駒が安定しない形なので、そのあたりの構想が良くなかった」。
やや苦戦を意識しながらも2日目の対局再開後は、自ら仕掛けて本格的な戦いへ突入。意を決して攻勢に出たものの、渡辺名人は攻守の要となる金を上がって冷静な対応を見せた。ここで藤井竜王は、主戦場となっていた1筋から突如として逆サイドの9筋の歩を進めて香車を取りに行く。しかし、この構想について「かなり大きな誤算があった」と振り返っていた。
渡辺名人は飛車を成り込み、先手の飛車角両取りで抜け出したかと思われたが、直前に藤井竜王が打ち込んでいた香車が終盤で大活躍。解説者の中村太地八段(34)は、「藤井竜王が“誤算”とした構想だが、一手一手の積み重ねの成果で致命傷にはならなかった。結果的に、交換した香車を打ち込んだ一着が勝因」とし、成香から桂打ちのコンビネーションで後手玉の急所を正確にとらえて、抜け出すことに成功した。最後は中村八段が「絶品の寄せ」と評した金頭に打ち込んだ歩の一着から押し切り、87手で勝利を飾った。
中村八段は、「勝ちになってから一気に駆け抜けた。左右挟撃になりづらい形なのかなと思っていたんですが、成香とフライング気味かと思った桂馬がぴったりと働いて、まるで魔法のようだった。中身の濃い、名局だったと思う」。ともに解説を務めた金井恒太六段(36)も「これでうまく仕留められるのかという組み合わせでしたが、見つけにくい筋を上手く手繰り寄せていた」と終盤での圧巻の指し回しに驚きの声を上げていた。
しかし、勝者の藤井竜王にとっては「苦しい将棋」。さらに「ここが良かったというのはない。全体的に正しい方向に読めていないことが多く、反省点の多い将棋だった」と話し、笑顔は少ない。注目の七番勝負はいよいよ“中盤戦”へ。「本局の内容をしっかり振り返って、次局以降集中して臨めればと思います」とより一層表情を引き締めていた。
第3局は5月13・14日に大阪府高槻市の「高槻城公園芸術文化劇場」で開催される。
(ABEMA/将棋チャンネルより)