「マウス×VR空間」を自閉症診断に応用 「脳の中で起きていること」に迫る
【映像】VRを使った自閉症マウスの実験
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 自閉症のマウスの頭部を固定し、VR映像を見せながらトレッドミルを歩かせた。すると、脳のネットワークの動きが健常マウスよりも“ぎこちない”ことがわかった。

【映像】VRを使った自閉症マウスの実験

 2023年3月、「VRを使ったマウスの脳のネットワーク解析」について発表した、神戸大学大学院・内匠透教授に話を聞いた。

■“VRならでは”のメリットとは?

 実験について、詳しく見ていこう。

 頭部を固定したマウスの前にスクリーンを設置し、映し出されたバーチャル空間を歩かせる。マウスの大脳皮質の神経活動をリアルタイムに測定し、マウスが動いたり止まったりするときの脳のネットワークを可視化する。このシステムを使って取り組んだのが、自閉症モデルマウスの脳のネットワーク解析だ。VRを使って自閉症のマウスの脳を測定することで、健常なマウスとの違いをより鮮明な形で確認できたという。

「運動するときに野生(健常)型のマウスに比べて、自閉症モデルマウスの場合は“ぎこちない”。野生(健常)型に比べて違う部分でネットワークの結合性が強まったり、野生型とは違う動きをしていることがわかった」(内匠教授)

 内匠教授はこの結果を通じて、自閉症診断のための新たな“バイオマーカー(指標)”の創出に期待がもてると話す。

――VRを用いた研究方法のメリットは?

「自閉症は対人関係・社会性の問題と言われているので、マウス同士の社会的なインタラクション(相互作用)を見たい。それは(同じ)空間の中でしかわからないので、人工的に再現できるメタバース空間を使うことで、マウス同士のインタラクションが見られるのではないか。その時の神経活動を記録するためにVRを使っている」(内匠教授)

 今後、研究チームはVRを2台接続し、健常マウスと自閉症モデルマウスが社会コミュニケーションを行う際の脳のネットワークを明らかにしていきたいとしている。

「嗅覚・触覚・聴覚など、VRは他の感覚系を人工的に組み合わせることができる。視覚刺激のときはどうか、聴覚・嗅覚ではどうなのか、その組み合わせの場合はどうなのかも含めて見ることができるのが最大のメリットだと思う」(内匠教授)

■メタバース研究は下火?

 メタバース研究の今後について、東京大学VRセンター特任研究員・宮本道人氏はこう話す。

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「VR業界はずっと昔からVR研究をしてきた中で、近年メタバースが爆発的に取り上げられるようになったが、今後も研究は粛々と続いていくと思う。メタバースは下火になったという声も聞くがそうではなく、ゲームなど日常の中に溶け込み身近になってきているのだ」(東京大学VRセンター特任研究員・宮本道人氏、以下宮本氏)

――メタバースもAIもさらに発展していくのか?

「流行って、みんなの意識から薄れてという中で少しずつ発展すると思う。パソコンも当初はみんなが持っていたわけではないが、Windows95の登場でブームになり、インターネットが組み合わさり、いくつかの技術が複合して広がっていった。メタバースもChatGPTも新たな技術と組み合わさってそうなっていくと思う」(宮本氏)

(『ABEMAヒルズ』より)

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