将棋界の早指し団体戦「ABEMAトーナメント2023」予選Bリーグ第3試合、チーム山崎とチーム斎藤の対戦が5月20日に放送された。勝ったチームが本戦行きの切符をつかむ大一番。第8局を任され見事チームの予選突破を決めた冨田誠也四段(27)だったが、終局後のインタビューで男泣きする場面があった。目になみなみと涙を浮かべ、「このチームでまだ戦えることが嬉しい」と喜びをかみしめた。
はじけるような笑顔がトレードマークの冨田四段が、この時ばかりは嬉し泣きの涙を止めることができなかった。チーム山崎との第3試合は、勝ったチームが本戦行きという絶対に負けられない展開に。2敗スタートから始まったが、第3局での冨田四段の勝利を反撃ののろしに一気に4連勝をマーク。リーダーの斎藤慎太郎八段(30)、黒田尭之五段(26)とのチームワークで予選突破に“王手”をかけた。
しかし第7局では、黒田五段が初手合いの新A級棋士・中村太地八段(34)の大熱戦の末に最終盤で逆転を許し敗戦。斎藤八段から「チームを作ったときに、2人に多く対局してもらいらいという気持ちがあったので、ここは冨田四段に行ってもらいたい。万が一の時は私が控えていると思ってもらえれば。頑張れ!」と熱い言葉で背中を押され、運命の第8局へと向かった。
対局前の冨田四段は「楽しんでやろうという気持ちでプレッシャーは感じていない。中村八段は対戦してみたい棋士の一人でした」といつもの笑顔。中飛車対急戦の出だしから、美濃囲いを築いた冨田四段がぐんぐんと攻勢に出て中村八段を圧倒。105手で大きな勝利をもぎ取った。
再び笑顔でインタビューに応じた冨田四段だったが、「この将棋に勝てたことも嬉しいですけど、予選突破でこのチームでまだ戦えることが嬉しい」と話すと緊張がゆるんだか、目にはじわじわと涙が。上を向いて零れ落ちそうな涙を必死に持ちこたえ、「今回も2連敗スタートだったので結構キツかった。チーム羽生との対戦の時に自分が負けてしまい、流れを悪くしてしまったので正直ダメかなと思っていて…。本当に厳しい戦いでした」と声を詰まらせていた。
悔しさを闘志に変え、第3試合では見事3戦全勝とMVP級の大活躍。ファンからも「闘志あふれる姿に感動しました」「本当にかっこよかった」「もらい泣き!」「ファン爆増ですよ先生!」と多くの声が寄せられた。本戦では、チーム斎藤のエースとしてますます大暴れする姿が見られることは間違いない。
◆ABEMAトーナメント2023 第1、2回が個人戦、第3回から団体戦になり、今回が6回目の開催。ドラフト会議にリーダー棋士14人が参加し、2人ずつを指名、3人1組のチームを作る。残り1チームは指名漏れした棋士が3つに分かれたトーナメントを実施し、勝ち抜いた3人が「エントリーチーム」として参加、全15チームで行われる。予選リーグは3チームずつ5リーグに分かれ、上位2チームが本戦トーナメントに進出する。試合は全て5本先取の9本勝負で行われ、対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで行われる。優勝賞金は1000万円。
(ABEMA/将棋チャンネルより)