5月31日、将棋の藤井聡太六冠が渡辺明名人に挑戦する名人戦七番勝負の第5局は、藤井六冠が56手目を封じて1日目を終えた。ここまでは藤井六冠が3勝1敗とリードしており、勝てば谷川浩司十七世名人の持つ21歳2カ月という最年少記録を更新しての名人獲得とともに、羽生善治九段以来史上2人目の「七冠」を達成する。
そんな中、『ABEMA NEWS』では羽生九段に単独インタビュー。AIの登場が将棋界に与えた影響とこれからの可能性について話を聞いた。
■AI時代の将棋
Q.AIの登場で将棋はどう変わった?
間違いなく進化している。今まで人間だけでは決して探索できない、調べることができない領域を調べられるようになった。そこにかなり大きな技術の飛躍があった。
Q.「人間には探索できない領域」とは?
感覚的にとか美意識としてこういう手は指さないとか、最初から考えないとか、そういうところにも実は様々な可能性が眠っていたということ。将棋は膨大な可能性があり、かなりの部分を捨てている。人間が瞬間的に捨てているものの中に実は大きな可能性が潜んでいる。
Q.今はAIとプロ棋士、対戦したらどちらが強い?
圧倒的にAIの方が強い。
Q.将棋界にとってAIは登場するべきだったと思う?
技術の進歩なので、起こるべくして起こったということだと思う。将棋の世界に限られた話ではなくて、他の世界も同様だと思っている。
Q.人類にとってAIは有用なもの?
わからない。使い方次第というか、ルールや法律、習慣というもの次第。そのものには善悪はない。
■AI時代の「プロ棋士」とは
Q.AIの方が強いとなると、“プロ棋士”とはどういう存在?
まさにそれが問われている。実際、藤井さんが活躍して、大きなニュースになって注目されているということは、そこに価値を感じてもらえる人がたくさんいる。何が価値なのかを考えた時に、物語だと思っている。ただ将棋を指して勝った負けたではなく、勝った負けたを繰り返していく中で紡ぎ出されている物語に対して、魅せられたり魅力を感じているということなのかなと。
■AI時代で「将棋が強い」とは?
Q.AI時代に「将棋が強い」というのはどういう意味を持つ?
AIが登場したというのは、人間が面倒くさいこととかやりたくないことを代価でやってくれる、そういう使われ方が多いと思う。将棋の世界では、それを使っていかに自分の才能を開花させるかが問われている。どういう風に活用していくかというのは、まだ試行錯誤の段階で、これから見つかっていくものと思っている。
Q.羽生さんはAIとどう向き合っている?
疑問を感じた局面を調べることが多い。参考意見を求めるみたいな感じ。人間に聞いて勉強になることもあるし、AIに聞いて勉強になることもある。
Q.人間に聞くのとAIに聞くのとの違いは?
人間は言葉でしゃべってくれるが、AIは手しか教えてくれないので、あまり親切ではない(笑)。ただ「こういう手がありますよ」「何点ですよ」と言ってくれるだけで、説明してくれない。そこからは自分で捉えなおさないといけない。
Q.AIを自分で言語化していく?
言語化というか、自分なりに消化して吸収していく。AIのプロセスはブラックボックスでできないので、自分なりに変換して理解できるものに落とし込む作業。
■将棋を続ける意味
Q.将棋を続ける意味は?
一局指したら新たな発見があるとか、新たな学びがあるとか、発見があること。
(『ABEMA NEWS』より)