去年成立した「改正資金決済法」が1日から施行となり、ステーブルコインの国内発行が可能になった。
ステーブルコインとは、ビットコインなどと同じくブロックチェーン技術を使った仮想通貨の一種と言われている。しかし、他の仮想通貨と大きく違い、ドルなどの法定通貨によって資産が担保され、価値の変動が抑えられているのが特徴だ。
これまで仮想通貨は価値が乱高下して、決済手段として使いにくいことが指摘されてきた。これに対してステーブルコインは、価値が安定することにより、決済手段として使いやすくなっている。また、今回の法改正によって企業間の送金手段などとして利用しやすくなり、経済活動の活性化が期待されている。
ニュース番組「ABEMA Prime」に出演した「JPYC」代表取締役の岡部典孝氏は「イノベーションが起こるのではないか」と話す。
「ステーブルコインは、ドルや円などの法定通貨に連動するように価値が設計されている。なかなか定義が難しいが、ざっくり言うと“広いステーブルコイン”と“狭いステーブルコイン”の2つがある。広いステーブルコインは、1ポイント1円だったら1ステーブルコインだ。今回、法律の要項ができた電子決済手段は、狭義のステーブルコインに当たる」
楽天ポイントやTポイントなどと比べて何が違うのか。岡部氏は「ポイントは入金されるまでに時間をかけてしまうことが多い。ステーブルコインは受け取ってすぐ使えるから、経済の活性化が期待されている。取引手数料も安く、同時に取引することでいろいろなリスクが抑えられる」と説明する。
今回の法改正で何が変わったのか。
「日本では完全な意味の“円”に戻せるステーブルコインの発行が今まで認められてこなかった。6月1日からは資金移動業などの必要なライセンスを取れば、民間の事業者がやっていいことになった」
1ポイントが1円なら、換えるという意味では同じなのか。
「例えばプリペイドの場合、図書券なら加盟店の書店だけで使える。しかし、発行元で円に換えるときは、手数料が数パーセント取られる。ステーブルコインはそういう加盟店などを抜きにして、発行元に持っていくとだいたい1ステーブルコイン=1円で返ってくる。平たく言うと、今まで取られていた手数料が浮く。小さいお店にもメリットがあると思う」
為替における差益差損を考えれば、手数料が安いほど発展していきやすい。実際、アメリカドルと連動したTetherやUSDCコインは急速に市場規模を拡大させている。
日本ではMt.Gox(マウントゴックス)によるビットコイン消失問題が有名だが、ステーブルコインは安全なのか。
「絶対大丈夫と思ってもらわないと使ってもらえない。だからこそ、銀行や資金移動業など、金融庁のライセンスを持ったところがしっかり発行する必要がある。銀行であれば、監督がある。資金移動業なら法務局に預けるルールにする。仮に我々が潰れたとしても100%返ってくる状態で保障しないといけない。私のようにステーブルコインを発行している会社の代表は、顔を出さないとなかなか信用してもらえないと思う」
既存の銀行は参入していきたいと思っているのか。
「参入を検討している銀行さんはある。ただ、今回の法改正では、法規制が厳しすぎる。実質的に『待て』になっている。逆にスタートアップ、資金移動業がスタートダッシュして、安全が分かったら法改正して、法規制を緩めていくと思う。その先に銀行さんがいる」
ネット掲示板「2ちゃんねる」創設者のひろゆき氏は「作りたい人は好きにステーブルコインを作ればいい」とコメント。
「安定性を考えるのであれば、日本円なりの普通の通貨に換えればいい。不便なのは、取引所が手数料を高くしすぎているだけ。手数料が安くなったら、ステーブルコインにいちいち換えずに、日本円で銀行に入れておいたほうが安全だ。ステーブルコイン自体、誰かがちゃんと保証しているわけではない。銀行取引などには使われるかもしれないが、預金保護もなかったりする。あまり一般的には儲からないし、使われないのではないか。個人決済レベルの額や、地方銀行レベルで“おもちゃ”として使うのは全然いいと思う」
その上で、ひろゆき氏は「ステーブルコインだけができるセキュリティはあるのか」と岡部氏に質問。岡部氏は「ちゃんと権限を持っていれば止められる。ただ、今までの仮想通貨はそういう権限があると『盗まれたらどうするのか』といって、権限を持たないようにしていた。逆に、盗まれた時に全体を止めることができなかった。ステーブルコインはそれだと使い物にならない。事実上の規制でセキュリティ機能を必ず入れることになった」と答える。
さらに、ひろゆき氏が「銀行であれば通帳やハンコをなくしても、担当者が亡くなっても、お金の救済手段はある。経理担当者がパスワードを忘れたら、終わりではないか。そんなものを国際間決済で何兆円も使うのか?」と聞くと、岡部氏は「それは複数人でカバーする」と回答。「例えば、3人のうち1人忘れても大丈夫な仕組みが、今どんどん今開発されている。多くのお金を動かす場合は、そういう仕組みを使った方がいいと思う」と述べた。(「ABEMA Prime」より)
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