「常勝軍団」とも「ブロンズコレクター」とも呼ばれたチームが、ついに頂点に立った。プロ麻雀リーグ「Mリーグ」2022-23シーズンは、5年目にして渋谷ABEMASが初優勝。4年連続3位という悔しい結果を乗り越えて、ようやく歓喜の輪を作り上げた。選手たちが肩を組んで試合会場に向かう姿からも仲のよさがにじむが、その絆を生むまでには数えきれない衝突もあった。熱した鋼を叩いて鍛え刀とするように、渋谷ABEMASは選手たちがそれぞれを鍛え上げた結果が、優勝シャーレへとつながった。
リーグ1年目から優勝候補と呼ばれ続けた渋谷ABEMAS。無数のタイトルを獲得してきた多井隆晴(RMU)が強烈なリーダーシップを発揮し、白鳥翔(連盟)、松本吉弘(協会)を引っ張るように戦ってきたが、多井の強引さゆえにチームの雰囲気が沈むこともあった。2年目、天真爛漫にして気配りもできる日向藍子(最高位戦)が入り、少しは柔和になったが、それでもまだひりついた雰囲気が流れることは珍しくなかった。日向は、加入後の日々をこう振り返る。
日向 ABEMASって試合後、めちゃくちゃ討論するんですよ。勝ってもめちゃくちゃする。「ダメだった」とか「微妙だった」とか。勝ったから「やったね!」で終わらせてくれないチーム。自分たちが真剣に取り組んでいる証しなんですけどね。最初はいろいろきつかったです。松本さんに多井さんがきつめなことを言った時、自分のことじゃないのに聞いていられなくて(苦笑)。「なんでお前、あんな風にしかできなかったんだよ」みたいな言い方の時は、はっと(無言に)なるみたいな。「なんでそういう言い方するの」って言うと、また揉めるんで(苦笑)。
圧倒的な実績・経験があると自負する多井が、後輩たちを叱咤激励するという構図だった。それが衝突を重ね、個々が成長したことで少しずつ変わってきた。白鳥、松本、日向の3人はそれぞれの雀力を高め、多井の意見に対して自分の考えを述べられるようになった。多井はYouTubeチャンネルの開設をきっかけに、今まで以上に多くの人に麻雀を伝えた経験から、後輩たちへの接し方を学んだ。男性3人をうまく機能させる潤滑油のような役割も果たしていた日向にして「最初の年とは全然違います」というのだから、チームとしての成熟度はまるで違う。
リーダーにしてエースが引っ張り続けた4年間とは違う展開もまた、チームとしての成長を促進させた。例年、個人で+200ポイントを当たり前に稼いできた多井が、レギュラーシーズンで絶不調。5年目にして初めてマイナスでシーズンを終えた。ここで踏ん張ったのが松本と日向だ。松本は「強い人でもああなるのが麻雀。そういう時に僕と藍子ちゃんで勝てて引っ張れた。エースが負けて他が勝つ。チームがなんとか粘ったのが大きいから、成長につながったと思います」と、チームを支えられた自覚も芽生えた。またポストシーズンでは松本とともに「ショウマツ」コンビで大活躍した白鳥も「隆晴に教えてもらったことはたくさんある。隆晴がいなかったとしても、レギュラーシーズンを突破できるチームでいようというのが3人(白鳥・松本・日向)で思っていること。隆晴が負けてもレギュラーを余裕で突破できるというチームの証明になったんじゃないかと思います」と胸を張った。
もしかしたら1年目や2年目で優勝していたら、今の渋谷ABEMASのような形にはなっていなかったかもしれない。強い個性の集合体が、チームとして成熟するまでに5年かかった。常勝軍団として勝ち続けながら強くなる。初年度から5年連続ファイナル進出という偉業を果たしながらの優勝だから、また違った意味がある。表彰式のステージで歓喜の涙を流した後、多井は次の夢を語った。
多井 今度はリーダーが代わるかもしれないですよ(笑)。ショウマツのどっちかが強いかもしれない。そうなったら理想です。僕が2番目、3番目になったら(チームとして)最強。翔ちゃんが「最終日、俺出たいです」ってなったらいいですよね。そうしたら第2章が完結です。
来年もファイナル進出、そして連覇を目指す渋谷ABEMAS。最終日の卓につくために、チーム内での競争は、もう始まっている。
※連盟=日本プロ麻雀連盟、最高位戦=最高位戦日本プロ麻雀協会、協会=日本プロ麻雀協会
◆Mリーグ 2018年に全7チームで発足し、2019-20シーズンから全8チーム、2023-24シーズンからは全9チームに。各チーム、男女混成の4人で構成されレギュラーシーズンを戦い、上位6チームがセミファイナルシリーズに進出。さらに上位4チームがファイナルシリーズに進み優勝を争う。優勝賞金は5000万円。
(ABEMA/麻雀チャンネルより)
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