自転車ロードレースのいいところは、選手と観客が近いところにある。とはいえ、ツール・ド・フランスの山岳でのレースで、沿道のファンがあわや選手と接触の場面があり、実況が思わず「危ない！」と声を上げる一幕があった。人の波がコースをふさぎ、選手が通る瞬間にそれが割れていくシーンは、まるでモーゼの十戒の海割りのようだった。
【映像】「危ない！」あわや選手が接触の瞬間（4時間58分ごろ）
選手がツールに出ることが憧れなら、観客にとってもツールを観戦することは憧れだ。特に山岳コースは選手のスピードが落ちるため、選手をじっくり見たり、声援を送ったりできる。昔なら、遅れた選手の背中を押して一緒に山を駆け上がる観客もいて、のちに「俺は選手を押してやった」と自慢するのが、ツールの情緒でもあった。今ではそれは禁止されてしまったし、勝負どころにはコース沿道に柵が置かれるようになったが、それでも、観客の壁と熱気は健在だった。
第1ステージもバスク地方スタートとあって、「やっぱりね」という沿道の光景が随所に見られた。まずそもそも、バスクの皆さんの応援は常に情熱的だ。それがバスク地方スタートとあっては、そのエキサイティングな応援に、ある意味期待値が上がる。案の定、第1ステージのキーポイントとなったピケ坂では、バスクのイメージカラーのオレンジが沿道を埋め尽くし、バスクの旗「イクリニャ」がはためいた。ボルテージの上がった観客は選手に道を譲ることを忘れ、実況が思わず「危ない！」というシーンも。過去には選手と観客の接触事故が何度かあったが、第1ステージもあわやの場面でヒヤリとさせられた。
危険はあれど、やはり沿道の人の波もツールの一部。自転車に乗ることが大好きな選手たちと、自転車レースを観戦することが大好きな人々で、このスポーツは愛にあふれ、世界中を魅了していると言ってもいい。
そんな愛のあふれる情熱的な応援シーンは、このあとも続くし、ピレネー山脈を走る第5ステージまでは、特にオレンジの壁に期待していただきたい。観ているときっと、その場に行ってみたくなるはずだ。
