暑さに関係なく、多量の汗が出る「多汗症」。生活に支障が出るものの、周りに理解されづらいことから“サイレントハンディキャップ”とも呼ばれている。6月に保険適用の新薬が登場した「手の汗」について、患者の悩みと治療法を取材した。
明らかな原因がないのに手のひらに多量の汗をかく「手掌多汗症」。ティッシュや紙が手に張り付いたり、指から滴り落ちるほどの汗が出たりすることもあり、日常生活にさまざまな支障がでるという。
「勉強していると、筆記用具が濡れて滑ってしまう。友だちと手が繋げない、楽器ができないなど、想像がつかないような悩みを抱えている方がとても多い」
こう話すのは、小杉町クリニックの稲澤美奈子副院長。
こういった症状を抱えている人は多い。日本皮膚科学会のガイドラインによると、日本人の5.3%、約20人に1人が手掌多汗症に罹っているというが、患者本人が症状を隠すため、周囲にはあまり知られていない。その精神的苦痛は大きく、別の病気を併発することも…。
「袖の中に手を隠したり、ハンカチを持ち歩いたり。独自の方法で周りから隠して生活している方がとても多く、“うつの併存”も多いことがわかっている」
深刻な状況に陥る可能性もある手掌多汗症。この病に長年悩んでいるという男性に話を聞いた。
「誰かと接触することは極力したくない。相手に不快感を与えてしまうのではないかと思うので、自分から握手はしない。握手をしようと考えた瞬間には、もう汗がにじんでしまっている」
小学生のときに、手掌多汗症に気付いたと明かす森柾貴さん。学生時代にしていた野球やテニスなどの手を使うスポーツも、手がふやけて皮がむけたり、道具そのものが汗で傷んでしまいやりにくかったそうだ。
「緊張で汗が出てしまうことによって、(道具が)滑る。テーピングを巻いてもそれを上回る汗をかいてしまっていた。電子機器、スマホ、パソコンとかタブレットなども手で扱うものは壊しかねない」
物が壊れるほどの汗とは、どのくらいの量なのだろうか。電車に乗る前に撮った森さんの手のひらと、30分ほど乗った後の手のひらを比較すると、まるで手を洗ったかのような状態に。
「人が大勢いる際にも汗をかいてしまうので、誰かに当たらないように気をつけたり、つり革を持つ際はしっかり手を拭く。電車とか閉鎖的な空間も多汗症患者が生きづらさを感じている場面だ」
有効な治療法が少なく、悩みの尽きなかった手掌多汗症。しかし今年6月、保険適用となった治療薬「アポハイドローション」が発売。寝る前に手のひらに塗るだけでよく、1週間ほどで効果が感じられるという。森さんも7月から使いはじめたとのこと。
「画期的だった。緊張する場面でも汗をかかなくなり、電車でもあまり出なかった。『あ、これが普通の人の汗の感覚なのか』と。すごく嬉しい」(※個人の感想です)
森さんは現在、多汗症患者をサポートするためのNPO法人「多汗症サポートグループ」に所属し、認知度向上のための活動を行っている。
「日本人の5%といっても、人口比率で言うと、それこそ数百万人いる計算になる。もしかしたら自分の家族が患者かもしれないし、友人や同僚など自分の身近な人にもいる可能性がある。多汗症の悩みがもっと身近になればより良い環境が作れると思っている。まずは、周りの人にこの病気を知ってもらうことが大事だ」
新しい治療法で改善される可能性のある手掌多汗症。稲澤副院長は「困っている人は一度皮膚科を受診してはどうか」と呼びかけている。(『ABEMAヒルズ』より)
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