将棋の藤井聡太王位(竜王、名人、叡王、棋王、王将、棋聖、21)が8月22・23日の両日、徳島県徳島市の「渭水苑」で行われた伊藤園お〜いお茶杯王位戦七番勝負の第5局で、挑戦者の佐々木大地七段(28)に95手で勝利した。この結果、藤井王位はシリーズ成績4勝1敗とし防衛4連覇を達成。保持する“七冠”を堅守した。決着局となった第5局では、終盤で藤井王位が手渡しの一手から驚きの構想を披露。ABEMAで解説を務めた勝又清和七段(54)は「ひえええ…!何それ!?」と声を上げ、中継画面からフレームアウトするほどの驚きを表現した。
シリーズは藤井王位が開幕3連勝でスタートダッシュに成功したものの、第4局では佐々木七段のエース戦法・相掛かりに敗れシリーズ初黒星。3勝1敗で迎えた第5局・徳島対局では、挑戦者が連勝を目指し後手番で横歩取りを志向した。やや穏やかな滑り出しとなったが、1日目夕方には佐々木七段が封じ手を巡る構想に2時間4分の大長考。佐々木七段は「封じ手で勝負に行こうと思ったが具体的な手順や構想が難しく、手損などが響くかなというのが1日目封じ手周辺の感覚だった」と振り返った。
佐々木七段が封じた一手は1筋への角打ち。藤井王位は「指されたら一番嫌な手だった」という。「それ以降少し苦しくしてしまった局面もあった」としながらも、激しくなる局面に対応するため中央へ角を投入。本格的な戦いへとなだれ込んでいった。
持ち時間が切迫する中で佐々木七段は竜を作ることに成功。すると藤井王位は、一見では狙いがわからない歩を垂らす驚きの一手を放った。ABEMAの中継では先手がと金を寄って角打ちを狙う手順が検討されていただけに、勝又七段は「ひえええ…!何それ!?」。頭を抱えて声を上げ、思わず画面からフレームアウトしてしまった。視聴者も「なにこれ!?」「AI超え来た!?」「悪手」「ファッ!?」「どゆこと?」「こればベストなの?」と大混乱の様子だった。
ABEMAの「SHOGI AI」は藤井王位側に向かって傾き出し先手がペースを握ったことを知らせると、激しい攻め合いの中で冷静な対応が光りリードを拡大。勝ちと見たら最短距離、と最後は桂馬を活用し遊び駒の無い正確な指し手でぎりぎりの勝負を制した。
勝又七段は本局のポイントを「ダントツ」で2筋への歩の垂らしの一手をチョイス。歩を垂らした後に金銀を交換、さらに玉を早逃げすれば詰めろが掛からないという壮大な構想に脱帽し、「この手を打っても詰むわけではなく、詰めろを掛けられたら負けてしまう危険な局面で手を渡すのはすごい」と評価した。
さらに、今年の年頭に藤井王位は羽生善治九段と王将戦七番勝負を戦ったことにも触れ、「“手渡し”は羽生九段が得意な技。感覚ではなく圧倒的な読みがあった上で(本局の)手渡しを成し遂げたのがすごい」とレジェンドとの激闘の経験をも自身の“養分”としたことに驚きを隠せない様子だった。
防衛4連覇を達成した藤井王位は、「序盤からどういう風に指していくか非常に構想が難しい将棋だった。(佐々木七段の)封じ手が良い手で、それ以降少し苦しくしてしまった局面もあったかなと思います。終盤も本当に際どく、最後まで難しい将棋だったのかなと感じています」とコメント。また、佐々木七段と激突した今期のシリーズを振り返り「どれも序盤からじっくり考える将棋が多く、すごく勉強になったシリーズだったと思っています。またしっかり振り返って、次につなげていけたらと思っています」と語った。
(ABEMA/将棋チャンネルより)