ファンの間で話題にあった「怒りの勝又」は本当に怒っていた。昨期、ファイナルシリーズに進出しつつ4位に終わり、2度目の優勝を逃した。過去に監督、さらにはライバル選手からネタ的に「勝又が怒っている」と扱われたが、当の本人は対戦相手ではなく、自分に対して「怒ることはありますよ。自分の不甲斐なさにです」と笑って明かした。インタビュー時、チラリと見せた右手の指には、チーム優勝のために繰り返す猛特訓による、ゴツゴツした「麻雀ダコ」ができていた。
【映像】Mリーグ2023-24シーズン 開幕直前インタビュー
-昨期を振り返っての自己評価は。
勝又健志(以下、勝又) レギュラーシーズンに関してはポイントを持ってセミファイナルに進めたし、セミファイナルではアドバンテージを持ってファイナルに進めたので、レギュラーとセミに関しては及第点を挙げられるんじゃないかなと思います。
-苦しかったファイナルでは切り替えが難しかったところもあったか。
勝又 まあまあ、それが実力だと思います。今思えば細かい部分でこうしておけばよかったなというところはあると思うんですけど、弱いから負けたということだと思います。
-4選手ともキャリアのある選手、あえてシーズン中に気をつけていたところなどはあったか。
勝又 毎年レギュラーシーズン序盤でポイントを稼ぐことができて、どこかで一旦ボーダーラインぐらいまでポイントを減らして、ということになってしまう。麻雀なので勝てないことがあるのは当然ですけど、大きく崩れないようにという意識はしていました。ラスを取らないようにしようというところでも、ラスを取ってしまうことがあるので、手堅く打ってトップを取りこぼさないようにしようということに重きを置いていました。
1週間に1回トップを取れば、大きくポイントを減らすことがないと考えていました。1つトップが取れない週があったんですけど、終盤までずっと毎週1回はトップが取れたのでそれは大きかったと思います。
-チームの中の会話は例年と比べどのような様子だったか。
勝又 あまり変わらないという感じですね。ポイントを持っていたので選択肢が多いというか、全員結果を出しているわけだし、同じか少ないかという感じでした。
-ファンのコメントでは勝又選手が「怒っている」というものが多かった。
勝又 あれはもともと1年目に(監督の)藤沢さんが言い出したんですよ。僕が4着だったことがあったんですけど「めちゃめちゃ相手の手が読めているな、いい感じで打てているな」ということがあって、2戦目で交代だったんですけど「もう1回やらしてくれ」と志願したら「頑張ってくれ」と言われて、トップを取ることができたんです。
それを藤沢さんが「怒りの連投」と書いて、それをまた多井さんがYouTubeで面白おかしく言ったということです。多井さんがいじりだしたのがここ2年前ぐらいということですね
-では、基本的に怒っているわけではない。
勝又 怒っている時もありますよ(笑)。自分の不甲斐なさだったり、練習したことがしっかりできていなかったりとか。麻雀なので読める時と読めない時があるんですけど、読めるべき局面を読めていなかった不甲斐なさというのは一番あるかもしれないです。
時間使えば読めそうとか時間使っても読めなさそうとか、感覚でわかるんです。3巡目のリーチというのはどんなに時間をかけても読めないけど、いっぱい手出しが入った12巡目のリーチだったら読めるかもしれない。「これ読めそうだ」と思う時に、人の手番でめっちゃ考えているんですよ、だけど時間は限られているんで、自分なりに感覚で結論を出すんですね。その結論が結果と大きくずれていた時に、これは読めなきゃいけなかったなという時がありますね。
その人がアガって読みとずれていた時に、これは読めていないなという時もあります。読めていたら自分に得ができる方向に持っていけたかもしれない、という時に自分に対して怒っています。自分に対しての不甲斐なさですよね。人の選択にはこちらは何もできないので。
こっちの人から見逃して僕から当たられたよ、となったら怒りそうなもんじゃないですか。でも相手はリスクを背負っていることだし、こっちがやることもあるし。むしろその相手の選択を読めなかった自分の責任なので、相手に対して怒ることではないですよね。
かっこよく言うとメジャーリーグのピッチャーがホームランを打たれた後にクラブをパーンと投げているのと同じかもしれませんね(笑)。あれって打った人に怒っているわけではなくて、自分がいいところに投げられなかったからですから。
-新しいシーズンに向けての準備は。
勝又 麻雀はびっくりするぐらい打っています。指にたくさんタコができていますから。去年も相当やったんで、もしかしたら去年の方が多いかもしれないけど、負けず劣らずという感じはします。相手の研究についてはシーズンが始まってからの方が、効率がいいんですよ。もちろん今もするんですけど、今は相手の研究よりも自分の精度を高めていく。キャンプの筋トレとか走り込みみたいな感じです。
とにかくひたすら麻雀を打って、開幕してから1週間経ったぐらいで相手の研究を進めていこうかなという風に思っています。団体とか関係なく全員が成長しているんですよ。新しいMリーガーは置いておいて、去年まで一緒に戦っている人たちも、昨期までの情報は持っているわけですけど、全員が更新されているわけで。今それを研究しても意味がないなと。僕が今、重きを置いているのは、トップを取る力。その成果がきっと出てくる。その後に相手の研究かなと思っています。どんなベテランプロでも必ず強くなっていると僕は思いますから。それぐらい全員がこのMリーグに照準を絞ってやってきていると思います。
-昨シーズン見て「この人変わったな」という選手は。
勝又 いっぱいいますよ。印象深い人は自分より年下の選手が多いです。みなさんがパッと思いつくところだったら高宮さん。すごく強くなったという言い方だと上からで嫌いですけど、変化があった。高宮さんだけじゃなく、岡田さんとかにも感じているし。松本君もすごく進化している。自分も強くなっていかないと簡単にやられちゃうと思います。
-来シーズンに向けての抱負は。
勝又 MVPを取りたいとかそういうのはないです。去年はラッキーで4着回避率が1位になれて嬉しいですけど、それをレギュラーシーズン中に「これを取るぞ」というような気持ちは1ミリもなくて、とにかく優勝したい、チームが優勝するためにいいポイントでセミファイナルに進みたい、というところなので、そのために全力で頑張りたいと思います。
-昨シーズンは二階堂瑠美選手が躍進した。
勝又 もちろんベースとなるところの精度は高まっていると思います。一番の部分は性格が優しいから、チームのためにという意識が強すぎて、これも上からであんまり好きじゃないですが、チームのためという感じでよそ行きの麻雀になっていた。そこが、昨期は自分らしく打てたというのが一番かなと思っています。
もちろん瑠美さんもしっかり勉強して、ベースが上がっていると思います。アドバイスは自分から言うということはないですが、一緒に練習会をしていて僕だったらこういう風に推理をするよとか、こういう風に攻めていくよとか、自分だったらこうするよという話をしています。あとはそれが自分に合っていると思えば取り入れてもらえばいいし、合ってないと思えば無視してもらってもいい。
逆に言えば自分も周りの話を聞いて、良いと思えば取り入れていきたいし、合わないと思えば右から左に受け流していきますし、自分の思考をしゃべるようにしていますね。
◆Mリーグ 2018年に全7チームで発足し、2019-20シーズンから全8チーム、2023-24シーズンからは全9チームに。各チーム、男女混成の4人で構成されレギュラーシーズンを戦い、上位6チームがセミファイナルシリーズに進出。さらに上位4チームがファイナルシリーズに進み優勝を争う。優勝賞金は5000万円。
(ABEMA/麻雀チャンネルより)