Webサイトなどで、知らず知らずのうちに不利な選択をしてしまう「ダークパターン」。あまり聞きなじみのない言葉だが、多くのWebサービスで見られ「消費者の認知の隙を突いている」として倫理的な問題が指摘されている。ダークパターンとは一体どんなものなのか、その実態に迫った。
【映像】「焦らせないで!」キャンペーン終了までのカウントダウン画面
「ダークパターンと言われているものは、一般的に言われている“詐欺行為”とは少し違う。明確に法律違反をしているわけではなく、そのほとんどがグレーゾーンのものだ」
そう話すのは『ザ・ダークパターン』の著者でUXライターの仲野佑希氏。
消費者庁の2022年度調査では、ダークパターンに遭遇したことがある人の割合が約90%、さらに東京工業大学の研究室がショッピングなど主要な200のアプリを調べたところ約9割にダークパターンが使われていたという。
どんなものがあるのだろうか。
「代表的な事例だと“インターフェース干渉”がある。色やボタンのサイズを強調したり弱めたりすることで、サイト利用者の選択を誘導するものだ。また、最近になって問題視されているのが、Webサービスの解約時に解約ページがなかなか見つからなかったり、解約するまでに何ページもステップを踏まないとたどり着けないといったような『妨害行為』と呼ばれるものだ」(仲野氏、以下同)
そのほかにも「カウントダウンで緊急性を煽る」ものや「あらかじめチェックマークが入った状態でメールマガジンの購読を強要するようなデザイン」など、普段使うWebサービスで見たことあるものばかり。さらに、ダークパターンに誘導されているのは消費者だけではなく、仲野氏は「事業者間でもダークパターンが使われているケースがある」と話す。
「宿泊予約サイトに登録している事業者が、ちょっとボタンを押しただけで宿泊代がすごく値下げされてサイトに掲載されてしまったというケースがある」
事業者側もダークパターンに惑わされているという。詐欺ではないというものの、取り締まることはできないのだろうか。
「6月に『改正特定商取引法』が施行されていて、この中に『詐欺的な定期購入の対策案』は盛り込まれている。ただ、あくまでこれは定期購入に関する法律なので極めて限定的だ。今のところダークパターン全体を取り締まる法律は、日本では限定的なものしかない現状だ」
一方、海外ではダークパターンの取り締まりは進んでいる。EUでは「プラットフォーム事業者はダークパターンを使用してはならない」など、明確な規定を設けている。
日本では規制が難しいなか、騙されないためにはどんなことに気を付ければいいのだろうか。
「消費者側もダークパターンについて知っておくことが大事だと思う。商品を購入するとき、ページに書かれている内容をスクリーンショットで保管する、購入する前に一呼吸置いてサービスの評判などを調べておく、そういった対応が身を守ることになるだろう」
このニュースについて、『ABEMAヒルズ』に出演した東京工業大学の西田亮介准教授は「ECサイトの消費者が拡大したなかで、半ば諦められたり高度化している不適切な商行為が改めて問題視されるようになった」と指摘する。
「インターネットの世界では“ダークパターン”は以前から半ばやむを得ないものと諦められていた。悪質な商行為を取り締まってほしい気持ちはよくわかるが、ただし単に立法を通じて規制強化すればいいのかというと、そうでもない。例えば『特定のWebサービスを作ってはならない』という法律を安易に作ってしまうと、事業者側の創意工夫の余地が著しく制約される。人間の脆弱性については、これまでにもテレビのサブリミナル広告などがあったが、業界側が自主的なルールを作りながら対策が普及した例もある。まずはインターネット事業者側が自主的なルールを作りながら、公正なビジネスをすることが大事ではないか。
今、インターネットの世界でやむを得ないとされていた問題が少しずつ見直されているのはとても大切なことだ。消費者の声が業界を浄化していく最初のきっかけになる。こうした声で規制当局も消費者保護の観点で立法を検討し、業界の『ちゃんとしなければ』という動機づけに繋がるのではないか」
(『ABEMAヒルズ』より)
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