将棋の藤井聡太竜王・名人(王位、叡王、棋王、王将、棋聖、21)が10月11日、王座戦五番勝負第4局で永瀬拓矢王座(31)に勝利、シリーズ成績3勝1敗で王座獲得に成功し、全8つのタイトルを独占した。終局後には記者会見に応じ「このような結果を出せるとは自分自身でも思っていなかったので、嬉しく思います」と偉業達成の喜びを語った。質疑応答の主な内容は以下の通り。
――八冠制覇、現在の心境は?
このような結果を出せるとは自分自身でも思っていなかったので、嬉しく思います。一方で、今回のシリーズは本当に苦しい将棋が多かったですし、実力としてまだまだ足りないところが多いというところが変わらず感じていますので、その地位に見合った実力をつけられるように今後一層取り組んでいかないといけないのかなと思っています。
――到達点に達したと思うが、達成感や充実感は?
もちろんすごく嬉しいことではありますが、ずっとそれを目標にしていたわけではないので、今後も変わらず取り組んでいきたいと思いますし、今回の王座戦の経験を今後の糧にもできたらと思っています。
――全冠制覇という点では羽生善治九段に並んだ。
全冠制覇にチャレンジできる機会は今後なかなか来ないかなと思っていたので、今回達成できたことはすごく嬉しいです。ただ、全冠制覇という点では羽生九段の記録と並ぶことができたと言えるかなと思いますが、羽生先生の場合はその後もトップのプレーヤーとして活躍しておられるので、私自身も今後息長く活躍できるようにやっていけたらと思っています。
――シリーズの内容を振り返って
今回のシリーズはどれも難しい将棋で、特に第3、4局は終盤ではっきり負けという局面がありましたので、逆のスコアでも全くおかしくなかたと思うので幸運な結果だったと思います。
――シリーズを戦い終えて、永瀬王座の強さとは
どの対局でも綿密に準備をされて臨まれていることを感じましたし、それ(研究)を離れた中盤以降も的確に指されることがすごく多かったので、永瀬王座の強さを感じて勉強になったシリーズだったかなと思っています。
――今後は棋戦の予選対局がなくなる。今後のモチベーション維持方法は?
今回のシリーズで足りないところがあるなと感じたので、そこを改善してこれまでと変わらず実力を高めていけるようにしたいと思っています。ただ、予選の対局がなかったりということで、時期によって対局数に偏りがでてしまったりということはあると思うので、そのあたりをどう補っていくのかというのは今後取り組んでいく上で考えていきたいと思っています。
――「歴代最強」の声も。自身ではどのように感じるか?
時代の違う方との比較は一概にはできないので、そう言って頂けることは嬉しいですが自分ではそうではないかなと思っています。ほかの方の将棋を見ていても勉強になることがすごく多いと思っているので、今後もそういったところからも学んでいけたらと変わらず思っています。
――今後、棋士として目標にすることは?棋士人生におけるゴールとは?
まずは実力をつけること、その上で面白い将棋を指したいという気持ちがあるので、そういったところを目指して行きたいと思っています。本局でも中盤の難しいところでバランスを取れなかったところがあったので、そういうところでバランスを保てるようになれればまた違った将棋が指せるようになるのかなと思っています。
――藤井竜王・名人が思う将棋の面白さとは?
一言では言えないかなと思いますが、将棋は取った駒を持ち駒として使えることがひとつの大きな特徴で、それによって中盤、終盤と局面が進んでいくにつれて複雑になっていくのが面白いところかなと思っています。私も将棋を指す中でそういった局面に出会えたらいいなと思いながら指しているという感じです。
――プロ入りから約7年、デビューから振り返ってどう評価している?
四段になった時から振り返ってみても、あっという間だったかなと感じています。特にタイトル戦に出られるようになってからは、自分が思っている以上に良い結果を残せたのかなと思っています。
――喜びを伝えるなら誰ですか?
まだ誰にも報告はしていませんが、家族や師匠(杉本昌隆八段)には後で伝えられたらと思っています。
――五冠達成時の現在地を富士山の「森林限界の手前」と表現。現在は?
結果という点ではその時よりももちろん残せていると思いますが、実力という点で見ると当時と変わらず課題が多いなと思っていますので、まだまだ頂上が見えるということは全くないのかなと思っています。どうしたら強くなれるかというのは手探りなので、いろいろ試行錯誤しながら進んでいけたらと思っています。
――今後、記録で意識している数字は?
タイトル戦が始まれば結果を残したいと思っていますが、長期的な先の先のタイトル戦で勝ちたいということは意識していないので、長い目で見ると面白い将棋を指すことが一番の目標になるかなと思っています。
――永瀬王座との出会いは「炎の七番勝負」企画だった。
まず、プロになった直後に「炎の七番勝負」という企画を用意していただいて、新四段では対戦できないような方との対局を組んでいただいてすごく貴重な経験ができたと思っています。そこから永瀬王座にVSという形で教えていただけるようになって、それを通して成長出来たのかなと思っています。今回のシリーズで改めて永瀬王座の強さと自分自身まだまだ足りないなという部分を強く感じたので、今後も永瀬王座をはじめ、いろいろな方の優れたところを勉強しながら強くんなっていけたらと思っています。
――地元の瀬戸市民へメッセージ
私が棋士になる前から支えていただいて応援していただいて、それがずっと励みになっていたのですごく感謝しています。瀬戸市でも私の将棋を見ていただく場所が出来たこともすごく嬉しいですし、今後も地元の方を元気付けられるような活躍だったり将棋が指せればと思っています。
――ファンへメッセージ
第3、4局は本当に苦しい将棋で、なかなか実感がないというのが正直なところでもあります。今回の王座戦は八冠にチャレンジするという点では貴重な機会なのかなと思っていましたし、それを掴めたことは嬉しく思っています。今後もしっかり取り組んで皆様に良い将棋をお見せできればと思っています。
(ABEMA/将棋チャンネルより)