東北楽天ゴールデンイーグルスの小深田大翔とともに盗塁王に輝いた福岡ソフトバンクホークスの周東佑京。
今季、そんな周東が、“脅威の足”で勝利を呼び込んだ数々の名場面が、このところ改めてネット上の野球ファンの間で注目を集めている。
周東の盗塁王獲得は、50盗塁をマークし、単独での獲得となった2020年以来、2度目のことだが、2020年に比べ、盗塁数そのものは減ったものの、今季は前回と比べ、打席数で80打席近く少ない中での獲得。なによりも周東が持つ“脅威の足”は、今季も様々な形でファンを沸かせ、話題となってきた。
9月25日に行われた千葉ロッテマリーンズ戦では、一塁走者として出た際に、ロッテ先発・小島和哉から牽制球を投じられるも、帰塁せずにスタートを切り、二塁を陥れるという驚きの走塁で進塁。その後、一、三塁の場面で、一塁走者が牽制に誘い出されたと見るや、躊躇せずに三塁からスタートを切り、本塁を陥れるという、WBC時にネット上で流行した「#周東は一塁でも得点圏」というハッシュタグを地で行くような走塁を見せることとなった。
また今季、周東はシーズン途中まで代走役を担うケースが多く、先発出場は少なめだったが、9月に入って先発起用が増えると、その“足”を活かした出塁も目立つことに。9月16日に行われた北海道日本ハムファイターズ戦では、高いバウンドの2塁ゴロを放った際に、ベースカバーに入った日本ハム先発・加藤貴之との“競争”にアッサリと勝利して内野安打にしたかと思えば、一塁走者となった途端に、次打者の初球でスタートを切り、盗塁成功するという離れ業を披露。長打ではなく、通常ならばアウトになるであろう内野ゴロを内野安打とした上に、盗塁で自ら得点圏に進むという、まさに“周東ならでは”のプレーであったといえるだろう。
こうした周東の脚力は、“脅威”どころか“恐怖”さえ与えるプレーを見せることで、周東は、相手チームにより大きなプレッシャーをかけていたという点も見逃せない。6月28日に行われた東北楽天ゴールデンイーグルス戦、2-2の同点で迎えた8回裏の攻撃、1死満塁、打者は9番・甲斐拓也という場面で、楽天4番手・渡辺翔太が投じた甲斐への初球、130km/hのスプリットが、外角へと大きく外れてワンバウンドすることに。
この1球は、捕手の炭谷銀仁朗が身を挺して前に落とし、大きく逸れることはなかったものの、ホッとしたのも束の間、この隙を突いて既に三塁走者の周東はスタートを切り、本塁へ。慌ててタッチに行くも間に合わず、楽天バッテリーにとっては、まさに“悪夢でしかない失点”となってしまった。こうした走塁を印象づけられてしまうと、相手チームにとっては、周東が三塁にいるという状況だけで、かなりのプレッシャーになることは言うまでもないだろう。
「塁に出るだけで嫌な選手」である周東は、ソフトバンクというチームにとっては大きなアドバンテージであるといえる。今季はキャリア最多であるとはいえ、114試合の出場にとどまった。来季はより多くの試合に出場し、その“足”で、より多くの勝利を呼び込むことに期待したいところだ。