羽生善治会長「将棋の面白さは何が起こるかわからないスリリングでドラマチックなところ」若き八冠王・藤井聡太竜王・名人の掲げる“目標”に共感
【映像】藤井竜王・名人が“八冠独占”を達成した王座戦第4局ハイライト

 将棋藤井聡太竜王・名人(王位、叡王、王座、棋王、王将、棋聖、21)が史上初の八冠制覇を達成したことを受け、日本将棋連盟の羽生善治会長(53)が10月20日、東京・将棋会館で報道の取材に応じた。会見の中では、藤井竜王・名人が今後の目標として掲げた「おもしろい将棋を指すこと」についても考察。さらに、「藤井さんの将棋を基礎、スタンダードととして受け入れて勉強して育ってくる棋士が出てきた時にどうなるか興味深い」と興味津々の様子だった。

【映像】藤井竜王・名人が“八冠独占”を達成した王座戦第4局ハイライト

 キンモクセイの花香る頃、将棋界に八冠王が誕生した。大偉業達成者は藤井竜王・名人。2023年度は保持するタイトルの防衛に加えて、初挑戦した名人戦七番勝負、王座戦五番勝負に勝利。21歳2カ月で史上初となる全八冠を独占した。日本中を驚かせた大ニュースながら、藤井竜王・名人本人は「実力としてまだまだ足りないところが多い。その地位に見合った実力をつけられるように今後一層取り組んでいかないといけないのかなと思っています」と引き締まった表情を見せていた。

 今後は防衛ロードが続いていくことになるが、その中で棋士として目標にすることは「おもしろい将棋を指すこと」。八冠達成後に臨んだ初の防衛戦の竜王戦第2局では、安全な勝ち筋を辿らずに最短距離を爆進するなどスリリングな最終盤を演じ勝利を手にしていた。さらに、将棋日本シリーズでは王座戦以来の対戦となった永瀬拓矢九段(31)を相手に主導権を得ると猛攻を開始。大きく駒損しながらも攻め切る華々しい将棋を披露した。

 1996年2月に全七冠独占を達成した羽生会長は、今年1~3月に行われた王将戦七番勝負で藤井竜王・名人と対戦。平成と令和の各時代を代表する天才同士の対決は“世紀の番勝負”として大注目を集めた。シリーズは2勝4敗で挑戦を退けられたものの、多くの将棋ファンの心を熱くさせた。羽生会長は、「藤井さんの指している将棋は特徴があり、ひとつの形を徹底的に深掘りしていく傾向がある。角換わり、相掛かりの深掘りの度合いが非常に深く、形によっては終盤戦まで調べ尽くしている。藤井さんの序盤戦はすごく緻密で正確で、一手一手細かい工夫がたくさんされている」と分析していた。

 今期の王座戦も典型的だったといい、「序盤の10手目、20手目くらいで端歩を突くタイミングとか銀を動かす順番とか、細かい工夫をいっぱいしているんですよね。ただ同じ将棋を指しているのではなくて、一局を指していく中で新たなアイデアや発見を見つけていこうとしているのではないかなと思っています」とコメント。さらに「一方で将棋のおもしろいところは、事前の分析や研究だけでは終わらないところ。お互いに何が起こるかわからないし、スリリングでドラマチックなところが多々起こりますよね。藤井さんも見ている人もそこに面白さを感じているのではないかなと思います」と若き八冠王の思いに共感していた。

 公式戦対局数が2000を超え、タイトル獲得数99期の羽生会長をもってしても、「将棋は奥深さ、新たな可能性、未開な部分もたくさんある。そういところに面白さ、魅力があると思う」という。「藤井さんの将棋を基礎、スタンダードととして受け入れて勉強して育ってくる棋士が出てきた時にどうなるかは興味深いのかなと思っています」と瞳を輝かせていた。

 今後、羽生会長に期待が寄せられるタイトル通算100期獲得には“藤井撃破”が必須となる。「もちろん私も現役の棋士。変わらず向上心をもってやり続けなければと思っています。なかなか藤井さんの牙城は崩せないが、今回の(王座では)永瀬さんが内容的に五分以上の将棋を見せてくれた。全くチャンスがない、全然希望がないということではない。自分も含め、今以上にさらに棋力を充実させて臨んでいくのがなにより大事では」とプレーヤーとしての更なる飛躍も誓っていた。

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【映像】八冠制覇の喜びを語る藤井聡太竜王・名人
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