■「爪が刺さって血が吹き出ても『よろしいですか?』と対応する現場」
介護現場に20年以上従事、現在はフリーランスで訪問介護などをしている佐藤さんは「日常茶飯事というと抵抗があるが、仕方がないかなとも思う。私も腕に20年前の傷が残っているが、利用者さんにガッと掴まれた時に爪が突き刺さって、血がブシャーッと。それでも『よろしいですか?』と確認しながら対応する現場ではある」と話す。
そうしたことへの“慣れ”から日常生活にも支障をきたしたという。「罵倒されるとか、お水を渡したらバンッと投げられて、『お前、なんだよ』と言われるとか。同僚とは機械の心で頑張ろうと話して、反応しないようにするのだが、日常でも感情が鈍くなってしまった。パートナーや友人にひどいことをされても大概耐えられるようになってしまい、どこを沸点にすればいいのかわからなくなった」と明かす。
さらに「(かつては)耐えるのも介護。触らせてあげてちゃちゃっと(介護を)済ますのがいいのよというのもあった」とハラスメント対応の現実についても語った。
「“場合によってはちょっとくらい触らせておいたらいい”というスルースキルが身に付いてしまっている」

