【写真・画像】 1枚目
【映像】心臓外科医による「心臓もみもみ~♪」ダンス
この記事の写真をみる(7枚)

 「本物の外科医」という名前で、YouTubeにアメリカの医療事情をコミカルに投稿する男性が人気を集めている。本当に、本物の外科医なのか。その投稿の意図を聞いた。

【映像】心臓外科医による「心臓もみもみ~♪」ダンス

「エンゼルスの大谷翔平ほんとすごかったね~。アメリカでピッチャーとバッターの二刀流でこんなに活躍するなんてほんとすごいよね。俺もYouTuberと外科医の二刀流で“医療界の大谷翔平”とかって言われたりしてるんだ。その割にはヒット打ってないって?やかましいわ」

【写真・画像】 2枚目
拡大する

 手術着を着て1人コントをする男性。「僕は心臓外科医なんですけど」と、「本物の外科医」と称し、様々な動画を投稿している北原大翔さん。インタビューに対し、心臓外科医であると説明するが、見れば見るほど医師のコスプレをしているだけなのではないかという疑念を抱いてしまう。

「僕は心臓心臓もみもみ~君の心臓心臓もみもみ~♪」

 しかし、本当に、慶應義塾大学医学部卒業の、米・シカゴ大学心臓外科の本物の外科医だ。

「ベースは海外で留学する人に対しての情報発信だが、僕自身が外科医なので、それ以外にも外科医が様々なことをやってみるという動画を作ったりしている」

 2017年に、海外で働く医療関係者が集まる「チームWADA」を結成し、YouTubeで動画を発信している北原さん。コミカルな動画だけでなく、医療の豆知識や医師を志す人に向けた情報も積極的に伝えている。

【写真・画像】 3枚目
拡大する

 「心臓取りに行ってみた」というタイトルの動画では、臓器提供者の心臓を摘出し移植希望者に届けるまでの1日を追った、海外で働く外科医のリアルな裏側を覗くことができる。

 日本の病院で働いた後、30代でアメリカに渡った北原さんだが、なぜ海外で働こうと考えたのだろうか。

「日本だと心臓手術が海外に比べて少ない。ただ、心臓外科医の数はある一定以上いる。そのため、割合で言うと1人当たりの心臓外科が行う心臓の手術の数というのが少ない。50~60代のシニアの外科医が手術をして、僕らは助手をするような形だったので、いつまでたってもそういう状況から脱却できないとちょっと厳しいなというのがあった。心臓外科として修練する、あるいは一人前の外科医になるために海外に行く必要があると思った」

【写真・画像】 4枚目
拡大する

 保険制度や病院へのアクセスのしやすさなど、日本の医療は海外と比較しても非常に充実している一方で、医師からすれば手術の経験を積みにくい実情があると北原さんは話す。

「10km圏内のところに1つ病院があって、そこが例えば年間1000件手術をやるか、3つ病院があってそれぞれが300件ずつやるかという違いだが、おそらく1つの病院で1000件やった方が1人あたりの手術数も多くなるし、無駄がなくなると思う。ただ、そんな簡単にそれができるかというと、そこで働いてる人たちがいて成り立っている現状があるので、簡単に集約することは難しい。それは今、心臓外科医の人たちがなんとか変えられないかということで色々と考えているようだ」

【写真・画像】 5枚目
拡大する

 アメリカに渡った結果、着実に経験を積むことができ、給与の面でも日本と比べ高い水準になった。そんな北原さんの中心にあるのが、「どうすれば自分が幸せでいられるか」という考えだ。

「僕は日本で生まれたので日本で普通に働くんだろうなと思っていたし、わざわざ海外に出て働く理由もないかなと思っていた。まさにその通りだが、逆に言うと『日本で働かなきゃいけない理由もそんなにないかな』と思った。例えば、もっと待遇が良くてお金が良くて住みやすい国があってそこで働く機会ができて、ビザなど居住の許可を法的にもらえたとしたら、そこで働いたらいいんじゃないかなと思うということをよく言っている」

 日本で生まれ育つと海外での生活はなかなかピンとこないが、「もっと広い選択肢が世界にはある」との思いで、北原さんはアメリカの医療事情や留学情報を動画で伝えている。

「(なぜ医師を志そうと思った?)やっぱりモテたかったというのが大きかったかもしれない。医者はなんかモテそう」

【写真・画像】 6枚目
拡大する

 北原さんと同じ慶應義塾大学病院に勤務していたという、精神科医の木村好珠氏に2足のわらじについて話を聞いた。

━━2足のわらじについてどう思うか?

「私は大学生のときから医学生とともにメディアの仕事も少ししていた。当初は『本当にできるの?』という目で見られたが、私としては『(2足のわらじを履いていない人も)休んでる時間、遊んでる時間あるよね?』と考えていた。むしろその時間でマルチタスクを学んだりメリハリがついたり、両方で学ぶことがあるので視野が広くなり、プラスの相互作用を及ぼすことが多いのでとても楽しんでいる」

【写真・画像】 7枚目
拡大する

━━少し前は、特に専門職の人は「1つの仕事に集中すべき」という風潮があったが、最近「パラレルキャリア」という言葉も出てきて、兼業を推奨する雰囲気がある?

「『オーバートレーニング症候群』という言葉があるように、1つのことをずっとやり込むことが良いわけではない。起きてる間に十何時間も勉強して、その全てが頭に入るかというと難しい。人間の1日のキャパシティなどを考えて、むしろメリハリをつけそれぞれに集中する時間を作るといい。自分が楽しいと感じることをパラレルキャリアにしたら、ワクワクが続き前向きな気持ちで両方の仕事をがんばれる良いツールになる。

━━1つの仕事で煮詰まっても別の逃げ道があるのでメンタル的にもいい?

「私はよく“思考の暴走”という言葉を使うが、1つのことを考えすぎると未来の抽象的なことをどんどん考えてしまう。人間の不安は、未来かつ抽象的なことに生じやすいと言われていて、反対に具体的なことを考えると不安が生じにくい。その仕事から離れた違う仕事における『今やるべきこと』に目を向けると不安が少し収まる。メンタル的に少し考えすぎてしまう人にもおすすめしたい」

(『ABEMAヒルズ』より)

この記事の画像一覧
【映像】「心臓もみもみ~」 歌って踊るシカゴ大の心臓外科医
【映像】「心臓もみもみ~」 歌って踊るシカゴ大の心臓外科医
【映像】友人の“キラキラ投稿”を見て傷つく…「SNS疲れ」の対処法
【映像】友人の“キラキラ投稿”を見て傷つく…「SNS疲れ」の対処法
【映像】承認欲求につけ込む令和版“ダマしの手口”
【映像】承認欲求につけ込む令和版“ダマしの手口”
医師が医療用麻薬・オピオイドを自分に注射…「寝てても苦しく、のたうち回る」“依存の壮絶さ”を本人が語る 背景には厳しい労働環境

■Pick Up
「ABEMA NEWSチャンネル」がアジアで評価された理由
ネットニュース界で話題「ABEMA NEWSチャンネル」番組制作の裏側

この記事の写真をみる(7枚)