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【映像】能登半島の液状化危険度マップ
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 能登半島地震の被害が大きかった輪島市、珠洲市では、今でも倒壊家屋数が「多数」と報告され、実数が把握できていないことがうかがわれる。この状況を受け改めて高まっているのが、耐震基準への関心。今基準となっているのは、1981年に定められた新耐震基準。震度5強程度ではほとんど損傷せず、震度6強から7で人命に危害を及ぼすような倒壊はしないというものだ。政府は2030年までに耐震性が不十分な住宅を概ね解消することを目標に、耐震化の支援をしている。

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 なぜ今回の地震で多くの家屋が倒壊したのか。地震から命を守るために何をするべきなのか、『ABEMA Prime』で考えた。

■1936年築の古民家が“全壊” 「この家に住み続けたら次の余震で倒れる」

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 輪島市の古民家(1936年築の元郵便局)を2022年12月に購入し、DIYでリノベしながら居住していた、サイボウズ災害支援チームで活動する野水克也氏。地震発生時、情報を調べようとパソコンの前に座ったとき、大きな揺れに見舞われたという。「1秒間に2メートル往復する感じ。最初の2振りで立てなくなり、机の下にとりあえず隠れた。壁や天井も落ちてきて“覚悟しないといけない”と思った時に止まった」と振り返る。家全体が北側に5度程度傾き、梁が折れる、窓ガラスが割れる、壁がはがれるなどの被害があったという。

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 災害における住居の被害認定基準は、倒壊や焼失などによって補修による再使用が困難な「全壊」、損害割合が40~50%の「大規模半壊」、30~40%の「中規模半壞」、20~30%の「半壊」となっている。

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 野水氏は「全壊に当たると思っている。住み続けるのはまず無理だ。2階を動いただけでフラフラするので、次に地震がきたら倒れるだろう」と説明。

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 金沢大学地震工学研究室助教の村田晶氏は、石川県内の被害状況について「輪島市に関しては3割程度が倒壊に近いような全壊になっている。それよりも被害が大きいところが、珠洲市の正院地区。おそらく4~5割は全壊で、そのうち3~4割は居住不可能、つまり生存空間が取れないことになる。そういったところに残られた方が多数お亡くなりになっているのではないか」と述べた。

■耐震基準を満たしても倒壊?

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 耐震基準は、制定後に2度改正されてきた。震度5程度で損傷しないことを検討する「旧耐震基準(1950年制定)」、震度5程度で損傷せず、震度6~7で倒壊しない「新耐震基準(1981年改正)」、木造の耐力壁や基礎の基準強化、地盤に応じた基礎の設定、接合部への金具取付、偏りのない耐力壁を配置する「現行耐震基準(2000年改正)」となっている。

 「震度7でも倒壊しない」基準が40年前にできながら、なぜ多くの家屋が倒壊してしまったのか。村田氏は「新耐震基準前に建てられたものを改築した建物は倒壊の割合が多い。どこまで耐震性能を上げたかは外部調査だけではわかりづらく、外壁と屋根瓦だけだったり、中の設備だけを更新する方もいる。その差が被害の濃淡に現れているのではないか」と推察。

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 珠洲市付近では2021年から3年連続で5弱~6強の大きな地震が発生。さらに、石川県内で震度1以上を観測した地震は2年連続で200件を超えている。「建物に対して影響を与える揺れが複数回、短期間のうちに起きると、建物の疲労がたまり強度が落ちていく。そこで今回の地震が引き金になった」とも述べた。

■耐震補強は「建物全体を守るのではなく、命を守る視点に」

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 野水氏が2023年3月に古民家の耐震診断を実施した際、基準は満たしていなかった。当時の建物としては頑丈だったことや、補強見積もりの500万円に対し市の補助は150万円だったこと、柱全体を覆う補強が必要で古民家の魅力が失われてしまうことから、断念した経緯がある。

 「命を守ることに限定して、例えば寝る部屋の壁と天井の一部だけを耐震補強する。建物全体を守るのではなく、命を守る視点に立ったほうが現実的ではないか」と訴える。

 これに村田氏は「私がいつも言っている発想と同一だ」とし、「寝室と居間に相当する所だけを確保すれば、なんとかなる。それ以外の所では、大きな机に潜れれば生存空間だけは確保できる。隣近所の方とコミュニケーションを取っていれば、“あの人出てこないよね”ということが分かるだろう。出てこなければ、“家の中にいる”ということで救助のリードタイムが確保できるので、人の生存という意味ではそれが優先だ」と主張した。

 被災者の今後の生活や復興については「おそらく半壊以上の建物を建て直す態勢的な余力も、精神的な余力もない。仮設住宅が建築中だと思うが、そこにそのまま住み続けるという状況になりかねない。現地の方はある段階でインフラのある所に移動させて、その間に恒久的な住宅を建築する。一時期は仮設、その後は災害復興住宅というスキームをとれないか」と提案した。

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 プロデューサーで慶応大学特任准教授の若新雄純氏は「能登半島は人口がそこそこいても、超高齢化地域だ。若者が家を継がずに出ていく中で、高齢夫婦は家を建て直すほどではないということで、一部を手直ししたりするわけだ。それを頼むのも、昔から仲良くしている地元の大工だったりする。そういう田舎の特性は能登半島だけではなく日本各地にたくさんあり、今回の地震で如実に出たのだと思う」との見解を示した。(『ABEMA Prime』より)

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