【写真・画像】国立小で“必修授業せず”に賛否 現役教師「受験だけに話がいくのは本末転倒」 保護者「今までの教育を壊さないで」 実態と指導要領の是非は 1枚目
【映像】“独自教育”保護者説明会の反応(会見から)
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 17日、国立奈良教育大学附属小学校が会見を開き、国語や理科、社会、音楽など、9つの教科で“不適切な指導”があったと認めた。

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 同校は、学習指導要領で定められた必修科目の履修を行わず、検定された教科書を使わなかったなどの事例が発覚しており、例えば3〜6年生まで国語で必修の毛筆による習字も全く行われていなかった。

 学校側は教員が校長に協力的でなく、独自の授業を行っていたと指摘。他の公立小学校との人事交流が不十分で、閉鎖的な環境だったことも一因とした。

 SNSでは「国の指導要領に背いていったい何を教育したかったのだろう」「指導要領は目安で、何をやるかは現場判断でいいのでは?」など賛否両論の声があがっている。

そんな中、文部科学省は、全国の国立大学付属学校で“不適切な指導”が行われていないか確認を行う方針を決めた。

 なぜ、“不適切”とされる指導が行われたのか。17日の『ABEMA Prime』では教育現場の専門家とともに実態と是非を考えた。

「この学校の教育が良い」会見で明らかになった実態は

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 今回の“不適切指導”発覚は、教育委員会への通報に端を発している。2023年6月、外部からの情報提供で学内に調査委員会が設置され、今月17日に会見。9教科で学習指導要領に示される授業内容が不足していたこと、教科書の未使用があったことが発表された。これを受け、卒業生を含めた不足教科の補習も実施する方向だ。

 具体的には、先述した『毛筆の書写』のほか、音楽では全学年で必要な『君が代』を6年生にしか教えていなかった、図画工作で検定教科書を使用していなかったなど、複数教科の授業内容が問題視されている。

 一方で例えば、理科の学習年次を入れ替えた指導は「この順番の方が効率的」という理由から行われたほか、教師らは独自プリントを用いてわかりやすく指導できるよう努めてきた。背景には同校に『附属高校』が存在せず、2023年3月の中学卒業生135人のうち国立校に40人を輩出した進学校という事情もあった。

 会見では、保護者説明会で「この学校の教育がいい」「今後もこの姿をなくさないでほしい」「今までの教育を壊さないで欲しい」という趣旨の声があがったことも明らかとなった。加えて、教科書の使用頻度が低い=指導要領から外れていると言い切れない側面も重要なポイントだ。

学習指導要領は守るべき?

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 賛否両論あるなかで、公立小学校教師(児童指導専任教諭)の齋藤浩氏は同校の指導を「大きな問題だ」と指摘。「我々教育公務員は、教科書・指導要領の内容を全て網羅すべきという立場だ。書写ゼロはまずい。言語文化に関する事項の指導の中で30時間の指定がある。それを無視して受験だけに話がいくのは本末転倒だ」との見方を示した。

 私立化しているとの指摘について「私立学校法で、私立教育の中でも公教育をしなくてはいけない、学習指導要領に則った指導にしなくてはいけないと定められている」と説明した。

 また、ヴィーガン給食を導入して話題になった公立小学校元校長の清水弘美氏も「40年前はこうした事例が普通にあった。日本の教育は世界に誇れる。離島や山奥の子どもにも同じ質の教育を届けられるすばらしさがある。学習指導要領は最低限教えなくてはならない内容で、それ以上の教え方は現場の先生に任されているが、要領が最低限を担保しているから、今の日本がある」と述べた。

 そのうえで「学習指導要領の内容を教え、得意なことを見つけるチャンスを子どもにあげることが正しい。親のための教育ではない。子どもは子どもの人生がある」と指摘した。

 作家・ジャーナリストの佐々木俊尚氏は「僕は中学、高校の授業で人生が救われたので学校教育には期待している。人生に必要ないと言うのであれば、小学校の算数以外ほとんど何も役に立たない。でも、クラブや部活動ではなく、授業でやることに意義がある。書道、体育、音楽など様々な教科を通じて“こんなに面白いものがあったんだ”と気づく。出会いの数を増やすことが大事だ。そのために教育指導要領があり、多くの科目を教える意義があるのではないか」と述べた。

毛筆の指導“なし” 問題点は?

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 トピックとしてあげられた毛筆の授業について、清水氏は「年30時間で月に約3回=週1回ほどという計算だが、30時間が適切かどうかの根拠はない。学校にいる総時間を“これが大事”と割って時間数を決めている。毛筆で身を立てられるのは限られた人だけ。すばらしい技能だが、学校で出会わなければそのチャンスもない。時間数は別として、毛筆は日本の文化なので継承すべき」と解説した。

 毛筆の専任教員でもある齋藤氏は「子どもたちには“毛筆を学ぶのではなくて、毛筆で学ぶ”と教えている。実生活上、毛筆で書く機会はほぼないが、集中力を養ったり、時間内に膨大な字を書く計画を立てたりすることは、人生で必要。毛筆は目的ではなくて手段だ。そのバランスとしての30時間ではないかと思う」と述べた。

 議論を踏まえて佐々木氏は「OECD諸国の国語読解力や数学力を調査すると、日本のレベルは常に高い。概ねトップから3位以内に入っている。日本は戦後の高度経済成長から平均して一般労働者の質が高いことが国力の源泉になってきた。その代わりに突出した能力を持つ人があまりいない問題もある。今から突出した才能だけを育てようとしてもうまくいかず、全体平均が落ちてしまう可能性がある」と指摘。

「奈良教育大学附属小学校は、閉鎖的で人事交流がない。自動車メーカーのダイハツが不正を何十年も続けてきたのも、外の世界がわからず、次第におかしくなってしまったから。教師の裁量は重要だけれど、逸脱しすぎないようために、学習指導要領があるのではないか。その度合いがどこまで許容されるかの議論を期待したい」と発言した。

 一方、タレントの山崎怜奈は「学習指導要領は必要かもしれないが、教科書に書いてあることをそのまま喋って、板書を書いて…という授業は学生時代聞く意味がないと思っていた。それより学校内で話し合って、授業を決めてというふうにやってくれる先生が信用できる。親御さんが納得しているなら、その学校のシステムとして必要なのでは。果たして子どもたちにとって“不適切”なのか」と疑問を投げかけた。

(『ABEMA Prime』より)

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