三重県・松阪市が6月から市内の3病院に救急車で救急搬送された患者のうち、入院に至らなかった軽症患者から7700円を徴収すると発表した。
7700円に関しては、救急搬送に伴う費用ではなく、紹介状を持たずに外来で受診した患者が病院に支払う「選定療養費」だという。賛否両論の“救急車有料化”について明星大学教授で臨床心理士の藤井靖氏と考えた。
━━全国の救急自動車の出動件数が増え続ける中、松坂市の判断をどのように受け止めているか?
「現在の基本的な受診のシステムは、まず身近にあるクリニックなどを受診し、もし大病院による治療・検査が必要となれば紹介状を書いてもらう、というものだ。だが救急を受け入れてる病院は大きな病院であることが多く、本来は救急で受診するような症状でない人が受診してしまい、本来治療を受けるべき人のためのリソースが割かれてしまう、といった事態が起こり得る。これらを踏まえてお金を徴収するシステムにしたのだろう」
「7700円の徴収には当然、反対の声もあがると思うが今回の費用徴収は心理的にはいわゆる『ナッジ』という相手の行動を修正するための一つのきっかけであると思われる。実際に救急車を出動させるともっと多くのお金がかかるはずだが『選定療養費』という形で大病院に紹介状なしで行く場合と同じ価格を徴収する」
━━実際に不要な通報は多く、ある53歳の女性は「自宅のテレビの配線がうまくいかなかったから救急隊員にやってもらおう」と救急に電話をし、またある34歳の女性は新聞紙で右手の中指を5ミリほど切ってしまったため救急車を呼ぼうとしたなどといったケースもある。選定療養費がストッパーになるということか。
「期待はできるが、人によって経済状況は異なる。7700円という金額が心理的あるいは行動的にどの程度の影響を与えるのか、きちんと実証実験を行なって考える必要もあるだろう」
━━一方で7700円という額がずっと頭にあって、本当に搬送が必要な場合にも救急への電話を躊躇ってしまうことも考えられる。
「行動修正という観点で考えるともう少し安くてもいいかもしれない。レジ袋の有料化などもその一例だろう。適正な金額についてはデータを集めるべきだろう」
※救急車を呼んでいいものかどうか判断を迷ったときの電話相談窓口「#7119」がある。ただし、実施エリア以外では#7119以外の番号で救急電話相談等を行なっている地域があるので自治体のホームページを確認してほしい。
(『ABEMAヒルズ』より)
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