東京都の小池都知事は2月、客による悪質なクレームなどのカスタマーハラスメント、いわゆる「カスハラ」を防ぐ条例の制定を目指すことを表明した。
客という立場を利用した理不尽な要求に苦しむ企業と同様、“人の怒り”と日々向き合っているのが、消費者からのトラブル相談に対応する消費生活センターだ。
全国の消費生活センターと連携する国民生活センターは、相談員に対し攻撃的な態度をとる相談者を「対応困難者」と定義し、その実態を調査。今後の対応困難者対策に向けた報告書をまとめた。
主な対応困難者のケースとして挙げられたのが、「過剰要求や無理な対応を強要する」などのほか「ネット書き込みや議員・他機関へ苦情を言うなどと圧力をかける」といったもの。
現状、全てのセンターが電話対応を実施しており、およそ8割のセンターが対応困難者は電話相談に多いと感じているという。
長時間に及ぶ対応に「精神的に追い詰められるなど、精神衛生上好ましくない状態が継続する」「1人体制の場合、対応困難者が発生すると他の業務ができない」(消費生活センター)などの声が。
消費者が抱える問題のサポートをする相談員がなぜか攻撃の対象に…。国や自治体に希望する対策については、「対応のための研修を充実させてほしい」「『対応困難者』の対応を拒否できる明確な基準やガイドラインを作ってほしい」といった声があがっている。
また、消費生活センターで勤務経験のある相談員にも国民生活センターはアンケート調査を実施。対応困難者に対して相談員が辛いと感じる行為には「一方的な主張に終始しコミュニケーションが取れなかった=74.7%」「長時間・長期間にわたって相談を終了できなかった=68%」「こちらの発言の揚げ足を取ったり、詰問されたりした=65.7%」という意見があった。
この問題について相談員が効果的だと感じた対応方法については、「消費生活相談として対応できる範囲を見きわめる」「冷静な態度を心がける」「丁寧な口調、相談者に付け入れられるような言葉を発しないなど、言葉遣いに気を付ける」などがあるという。
また、全国の消費生活センターの7割が「『対応困難者』の対応を拒否できる明確な基準やガイドラインを作ってほしい」という回答もあったという。
対応困難者の現状について東京工業大学の西田亮介准教授は「相談員の人が自分で頑張るのではなく、自動音声ガイダンスなどを通じて『通話が録音されていること』『電話番号を把握していること』『場合によっては適切な対応を取ること』を対応困難者の人たちにしっかりと意識させる仕組みを作るべきだ」とした上で「テキストやチャットでのやり取りでは不十分だと感じ、人間的な対応を求めている人たちが連絡をしてきているため、完全に排除しきるのは困難だ。そのため、いっそのこと基本的には機械やAIで対応する仕組みにしてはどうか。インターネットの普及率は60歳未満層あたりまでは十分高く、若い人だけではなく現役世代も『電話での相談』を求めなくなってきている。徐々に電話対応ではないシステムによる対応を原則にすればよい」と提案した。
(『ABEMAヒルズ』より)
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