世界でも有数の“働く国”であるにもかかわらず日本の実質賃金は25カ月連続で減少している。原因はどこにあるのか? 経済アナリストの森永康平氏に聞いた。
━━4月に労働者が受け取った「名目賃金」は去年の同じ時期と比べて2.1%増え、28カ月連続の増加となった。しかし、「実質賃金」は過去最長の25カ月連続で減少している。現状をどう見るか?
「春闘で賃上げが行われたが、物価の上昇には追いつかず、実質賃金が引き続きマイナスとなった。ただし、春闘は必ずしも4月に全てが反映されるわけではなく、遅れて5月に反映される企業もあるため、今後のデータも見ていく必要がある。とはいえ、鈍化はしているものの物価の上昇が続いているため、年内に実質賃金がプラスに浮上するのは厳しいかもしれない」
━━一方で総務省の家計調査によれば、2人以上の世帯が消費に使ったお金は実質で前年同月比0.5%増え、14カ月ぶりの増加となった。消費は本当に旺盛なのか?
「これは統計の見方に原因がある。連休の多さや閏年などの影響を除去した『季節調整値』で見ると、消費は相変わらずマイナスだ。加えて、コロナ期間中の授業料減免が終わったことで教育費が増えたことも要因。つまり、『消費が強い』というわけではない」
━━6月から所得税の定額減税が始まるが効果は期待できるか?
「定額減税は1人当たり4万円で1回限りだ。それが無駄とは思わないが、大した効果は期待できない。今後、電気代・ガス代の補助が切れ、7月の請求分から大幅に上がるため、減税の効果はすぐに打ち消されるだろう」
━━日本商工会議所の調査によると、中小企業の賃上げ率は3.62%とのことだがこれをどう見るか?
「今回の調査対象は1979社と限られており、日本全体の中小企業数に比べれば少ない。つまり、“大きめの規模の”中小企業の賃金が上がっただけであり、全体ではそれほど引き上げられていないのが実態だ」
━━大手企業の賃上げ率は5.58%であり、中小との格差が指摘されている。これについてはどうか?
「恩恵が上から下に流れるというトリクルダウンという理論はあるものの、実際には綺麗に流れない。大手は儲けた分を株主に配当したりするため、中小零細企業を救うための政策を考える必要がある」
━━賃上げができない企業とその従業員は非常に苦しい状況だが今後どうなるのか?
「自然競争の中で淘汰されるシナリオが見える。政策として企業数を減らし、大手に集約させるような“韓国型の企業のあり方”を目指しているように見えるが、個人的には違和感がある」
━━トリクルダウンは難しいが、方針転換しないのはなぜか?
「トリクルダウンの理論に固執しており『教科書通りになるべきだ』などと考えているのかもしれない」
(『ABEMAヒルズ』より)
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