塚原さんは、子どもは「周囲に言うと家族が崩壊する」と思うこと、「自分が性被害を受けているとわかるまで時間を要する」と話す。「中学2年生の時、教室で周りの子が『彼氏と〜』と話しているのを聞いて、“私は自分の父親だ”と。それまで性被害を受けているとはわからなかった。『外で言うな』とも言われていた。自覚した後も、自分が共犯になっているような感覚から、さらに言えなくなる悪循環だった」。

 16歳の時に妹と警察へ逃げ込んだものの、「お父さんを逮捕しても3年で出所するが、仕返しは大丈夫?」と聞かれたという。児童相談所でも、「面談室で父親と隣同士に座らされた。『帰りたくない』と言っているのに、『お父さん何もしないと言っているから』と。殺されるかもしれないという恐怖から『帰る』と言うしかなかった」。

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 塚原さんが今発信する背景には、さらにつらい経験がある。「20年ほど絶縁していたが、父親に居場所がばれ、『遺産相続のことで話がしたい』と手紙が来た。怖かったが、しばらくしてから電話をかけた。父親のせいで自殺した弟の名前を告げると、『あの子は死んでも構わないが、たえちゃんが死ぬのは嫌だ』と言われ、『この人はもう許さない』と思った。今私にできるのは、法改正や時効撤廃への働きかけ。弟には毎日『ごめんね』としか言えない。生きているうちに助けてあげたかった」。

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