不朽の名作には、これから始まる物語に観客を一気に引き込む秀逸なアバンタイトルがつきもの。「ルパン三世 カリオストロの城」の冒頭シーンもその筆頭といえるだろう。ルパンの魅力と冒険への期待に満ちたそのプロローグを見てみよう。
【映像】ご機嫌だったルパン、テンションだだ下がりの瞬間(1分0秒ごろ〜)
映画「ルパン三世 カリオストロの城」は、1979年に製作・公開されたモンキー・パンチ原作のアニメ「ルパン三世」劇場用映画シリーズ第2弾。後にスタジオジブリを設立する宮崎駿氏の初長編監督作品としても知られる。宮崎駿の個性と技術が詰まった、日本映画史に残るシリーズ屈指の人気作だ。
盗み出した大金がゴート札と呼ばれる偽札だと気づいたルパン三世(CV:山田康雄)と次元大介(CV:小林清志)は、ゴート札の秘密を探るため、ヨーロッパの小国・カリオストロ公国へやって来た。そこで謎の男たちに追われていた少女クラリス(CV:島本須美)を助けるのだが……。
物語のオープニングに先立ち、アバンタイトル(タイトルより前に流れる導入的なストーリー)でルパン一行がカジノの金庫から大金を盗み出す場面が描かれた。50億ドルを超える札束を詰め込んだ愛車フィアット500を走らせながら、こみ上げる笑いを抑えられないルパンと次元。車内で「札ビラのシャワーだ、それ!」とはしゃぐ2人だったが、ルパンは何かに気づくと急にテンションダウンし、こうつぶやいた。「捨てちまおう。こいつは偽物だよ。よくできてるがな」
ルパンはここにきて盗んだのが偽札だったことを知ったのだ。「まさか……国営カジノの大金庫からかっぱらったんだぞ」と驚く次元に、ルパンはこれが世界の歴史の裏で暗躍してきた“幻の偽札”ゴート札だと告げる。そしてすぐに気を取り直し、不敵な笑みを浮かべると「次元、次の仕事は決まったぜ。前祝いにパァーッとやっか!」と言って走るフィアットのサンルーフから大量の偽札をバラ撒いたのだった。
空を舞う紙幣とヨットが浮かぶ真っ青な海をバックに流れ始めるオープニング曲、そして映し出される「ルパン三世 カリオストロの城」のタイトル。ゴート札の謎をめぐる物語の序章としてこれほどまでに美しい映像はないだろう。誰もが開始数分でこの作品に魅了されるはずだ。
原作:モンキー・パンチ(C)TMS